研究課題/領域番号 |
18K14296
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
梶山 智司 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (30789649)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 層状化合物 / イオン脱挿入反応 / 電気化学 / 分子集合体 / 有機無機複合体 |
研究実績の概要 |
酸化還元活性な有機分子を組織化して配列させることで、効率的な導電パスおよびイオン挿入サイトを有する電気化学活性材料を創出することが本研究の課題である。本研究では、層状構造を有する無機化合物の層間に、設計・合成した有機分子を配列させることで、電気化学的機能性材料の創出を行った。サイクリックボルタメトリーなどの電気化学測定の結果から、層状構造に配列していない単体の有機分子と比較して、耐溶媒性・電気化学反応の可逆性が向上するという結果が得られた。これにより、イオン拡散パス・挿入サイトおよび酸化還元活性部位を組織化して配列させることが、電気化学材料としての機能を向上させることに対して、効果的なアプローチであることが示された。単体の有機分子と層状に配列した有機分子の反応電位を比較したところ、組織化することで変化するという結果が得られた。反応電位の調整と言う点でも、酸化還元部位を配列することは重要であることを見出している。 これら電気化学的イオン脱挿入反応における構造解析変化を行い、層間という十分に広い空間があるために、比較的小さなイオンであるリチウムイオンの電気化学的脱挿入反応において結晶構造単位格子がほとんど変化しないことが見出された。 さらに、広い層間空間を利用した様々なイオン脱挿入反応が可能であることが期待できるため、リチウムのみならず比較的大きいナトリウムイオンなどの電気化学的イオン脱挿入反応を行っている。 以上、酸化還元活性な有機分子を組織化して配列させることで、その電気化学的特性を制御・向上できる、という結果が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、酸化還元可能な分子の合成と、それを層状に配列した分子集合体の作製に成功しており、合成した分子集合体が電気化学的リチウムイオン脱挿入反応を示すことを見出している。この電気化学的リチウムイオン脱挿入反応機構解析のためのセル設計も完了しており、材料の機能評価まで完了しており、それらの結果について学会発表を行っている。リチウムイオン以外の脱挿入反応について、当初計画していたセル設計および電解液では反応機構が十分に追跡できないという結果が得られたが、これらの課題解決のために十分な検討を行えている。以上から、本研究は、研究開始当初予期していない課題に直面したものの、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画としては、これまで得られた結果について国際誌への論文発表準備を進めるとともに、得られた材料に様々なイオンを電気化学的に脱・挿入を行い、その際の電気化学特性および構造変化の評価を行う。層状に配列する有機分子について、新たに設計・合成を行うことにより、分子構造と反応電位などの電気化学特性の関連性を評価し、電気化学材料の設計指針について知見を得る。また、層状ではなく、酸化還元活性分子が一次元に配列した材料についても設計・合成を行い、二次元の層状・一次元のカラム状など酸化還元活性分子の配列様式が電気化学機能特性に与える影響についても評価を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
電気化学機能評価のための電気化学セル設計について、当初予期していなかった課題に直面し、それらを解決するための検討を行っていたため、材料合成のための試薬および構造解析のための機器利用費用などについて予定より少ない利用額となった。機能評価のためのセル設計は当該年度で検討済みであるため、次年度使用額は新たな材料設計と電気化学反応解析および構造解析のための費用に充てる予定である。
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