研究実績の概要 |
(チオフェン/フェニレン)コオリゴマー (TPCO)の1種である5,5′-bis(4’-methoxybiphenyl-4-yl)-2,2′-bithiophene (BP2T-OMe)の薄膜 (105 nm)を活性層とするDBRマイクロキャビティを作製し,その光学特性を調べた.DBRミラーは,Ta2O5とSiO2から成る6ペアの交互積層膜で構成される.BP2T-OMeは,DBRミラー上に直接蒸着すると基板に斜立して配向するため,基板に対して分子軸が寝て配向する5,5'-bis(4'-cyanobiphenyl-4-yl)-2,2'-bithiophene (BP2T-CN)を予め5nmまたは10nm蒸着し,その上にBP2T-OMeを100nmまたは95nm蒸着した.BP2T-CN/BP2T-OMe二層膜のX線回折測定を行ったところ,BP2T-OMeの(020)面からの回折ピークが観測されたため,BP2T-CN薄膜上ではBP2T-OMe分子は寝た配向をとることが明らかとなった.また,BP2T-OMe単層膜を活性層とするマイクロキャビティの透過スペクトルと角度分解発光スペクトルを比較した結果,透過と発光スペクトルのピークがほぼ同じエネルギー位置に観測されており,発光スペクトルのピークエネルギーが検出角度の増大に伴って高エネルギー側にシフトしたことから,この発光スペクトルのピークは,下枝ポラリトンに起因するものと結論付けた.さらに,BP2T-OMe蒸着膜とBP2T-OMeマイクロキャビティの発光スペクトル及びその発光寿命を調べた結果,マイクロキャビティでは,蒸着膜に比べてシャープなスペクトルを示しているうえ,発光寿命も蒸着膜に比べて短寿命化していることがわかった.この短寿命化は,パーセル効果に起因すると考えられる.
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