研究課題/領域番号 |
18K14306
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
齊藤 雄太 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (50738052)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 層状カルコゲナイド / テルライド / pn接合 / トポロジカル絶縁体 |
研究実績の概要 |
2018年度は高配向Bi2Te3/Sb2Te3積層膜の界面評価と拡散バリア層の影響の調査、およびpn接合デバイスによる縦方向整流作用の測定を行なった。異なる膜厚比のBi2Te3とSb2Te3を成膜したが、どのヘテロ構造でも結晶構造のc軸が常に基板に垂直に高い配向性を持って成長することがわかった。これら各種ヘテロ構造の横方向の電気輸送特性をホール測定によって計測したところ、膜厚比に応じてn型とp型の電気伝導を示した。これは、n型になりやすいBi2Te3と、p型になりやすいSb2Te3の厚さの競合によるものと理解できる。 Bi2Te3/Sb2Te3積層膜を用いて縦型のpn接合デバイスを作製し、電気特性を測定した。その結果、電流-電圧特性は線形的なオーミック挙動を示し、整流作用を示さないことがわかった。これは、どちらの層もほとんど縮退したような半導体であり、金属的な電気伝導挙動を示すことに起因すると考えられる。先行研究において、本ヘテロ界面においてBiとSbが数nmスケールの相互拡散をしていることを突き止めていた。そこで、この界面拡散が電気特性に影響を与えている可能性を考慮し、拡散バリア層としてアモルファスSiをスパッタ法にて成膜した。その結果、界面での拡散は抑制されてはいるが、依然として電気特性はオーミック的であった。これは、アモルファスSi層は拡散防止には効果的だが、電気的には整流作用を生じさせる効果は期待できないことを示している。現在、第一原理計算によって、Bi2Te3とSb2Te3の格子定数と近く、かつバンドギャップが大きい(電気抵抗が高い)物質を体系的に調査し、拡散防止効果および高い電気抵抗層として働く可能性について検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的に示した(i)高配向Bi2Te3/Sb2Te3積層膜の界面評価と拡散バリア層の影響の調査、および(ii)pn接合デバイスによる縦方向整流作用の測定を行うことができた。スパッタ法による本積層構造の作製はほとんど報告がなく、縦方向の電気特性を評価した論文はないため、新たな知見として価値がある結果が得られた。また、新規拡散バリア層の検討を行い、第一原理計算を用いた電子状態計算によって拡散防止性能かつ高抵抗を実現できる材料を提案するところまで進展した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度得られた知見をもとに、新規拡散バリア層の用いたデバイスの検討を行なっている。また、縦方向電流-電圧特性がBi2Te3およびSb2Te3自身の低い電気抵抗に起因するもので、どうしても避けられない可能性が生じた場合は、より電気抵抗が高い材料における置換も検討に入れる。その際は、研究の目的でも示したように、不安定なカルコゲナイドガラスでは本研究の方針から外れるため、あくまでも結晶相で、かつメモリ層のTe化合物との整合性を取るためにTe系のカルコゲナイドに焦点を当てる計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画よりスパッタターゲット等の消耗が早くなく、消耗品費を節約できた。また、旅費が当初の想定よりも少なく済んだ。 翌年度は、その分多くの物品が必要になると予想され、また、より多くの学会に参加し発表を行う計画であるので、主に物品費、旅費として使用していく計画である。
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