研究課題
これまでの研究で、高配向Bi2Te3/Sb2Te3積層膜のpn接合デバイスによる縦方向整流作用の測定を行なった結果、電流-電圧特性は線形的なオーミック挙動を示し、非線形な整流作用を示さないことがわかった。これは、どちらの層も縮退半導体であり、金属的な電気伝導挙動を示すことに起因すると考えられた。ヘテロ界面においてBiとSbが数nmスケールの相互拡散をしていることがわかり、この界面拡散が電気特性に影響を与えている可能性を考慮し、拡散バリア層としてアモルファスSiをスパッタ法にて成膜した。しかしながら、界面での拡散は抑制されてはいるが、依然として電気特性は線形的で、整流作用を示さなかった。これは、アモルファスSi層は拡散防止には効果的だが、電気的には整流作用を生じさせる効果は期待できないことを示している。第一原理計算によって、Bi2Te3とSb2Te3の格子定数と近く、かつバンドギャップが大きい(電気抵抗が高い)物質を体系的に調査した結果、ヘキサゴナルBNが拡散防止効果および高い電気抵抗層として働く可能性があることが示唆された。現在、上記の一連の結果について論文執筆中である。各層の抵抗を高める可能性の一つとして、組成の変調が挙げられる。一方で、組成が変わるとスパッタリング法による成膜挙動も変化する可能性が指摘されたため、様々なTe系カルコゲナイド薄膜の成膜挙動の詳細な研究も実施した。さらに、高い配向性を持ちつつ、より高抵抗を示す可能性のある材料候補が絞り込まれつつあり、今後本研究終了後も継続して実験による検証を行っていく予定である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
Journal of Physics D: Applied Physics
巻: - ページ: 印刷中
doi.org/10.1088/1361-6463/ab850b