研究課題/領域番号 |
18K14314
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
西尾 和記 東京工業大学, 物質理工学院, 特任助教 (60805117)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 全固体Li電池 / 固体電解質/電極界面抵抗 / 電極/集電体界面抵抗 / 超低抵抗界面 / LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2 / LiNi0.8Co0.2O2 / 集電体フリー全固体薄膜Li電池 / 界面ダイポールエンジニアリング |
研究実績の概要 |
本研究における研究目的・実施計画から①実電池正極材料の薄膜モデル電極作製し、固体電解質との清浄界面において超低抵抗界面を達成する、②それらモデル電極界面にナノ層を導入し、界面抵抗起源解明及び低抵抗化のための界面構造制御、そして③電極表面上に様々なガス種を吸着させてガス種が及ぼす界面抵抗起源探索、を主に実施した。さらに④電極/集電体界面抵抗の起源探索まで展開した。 ①においては現行のLiイオン二次電池で実用実績のあるLiNi0.8Co0.2O2やLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2等の正極材料に着目し、表面・結晶方位が規定されたエピタキシャル薄膜合成を行った。全真空プロセスによる薄膜電池素子作製・評価を行うことで、Li3PO4固体電解質との界面において 10 Ωcm2以下という極めて低い界面抵抗を達成した。以上、様々な正極材料においても超低抵抗界面を形成できることを実証した。②においてはAl2O3ナノ層を1 nmから50 nmの範囲で厚みを変えて電極表面に被覆し界面抵抗の定量的評価を進めている。Liイオン伝導体でない絶縁体を導入しても電気化学反応が進行することを見出した。今後、このナノ層内におけるLiイオン伝導機構の解明を進めていく。③に対してはLiCoO2のモデル電極を作製し、その表面に様々なガス種(H2、O2、CO2、N2、Ar、H2O等)を吸着させて固体電解質/電極界面を形成することで界面抵抗の定量評価を行った。ガス種のうち、H2Oが界面抵抗増大起源であることを見出した。④においては、LiCoO2電極/NbドープSrTiO3集電体界面抵抗起源がショットキー障壁であると推定し、その障壁由来の界面抵抗を界面ダイポールエンジニアリングによって低減させることに成功した。この結果は全固体Li電池において電極/集電体界面も今後重要な課題になり得ることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実電池に利用されている正極材料の LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2(NMC)やLiNi0.8Co0.2O2(LNC)等のモデル電極を作製し、固体電解質との界面抵抗が極めて低いことを実証した。さらに、界面抵抗値には結晶方位の依存性が示唆される重要な結果が得られた。Liイオン伝導経路と界面抵抗に相関があることを示唆している。また、LNCにおいては高い電気伝導特性を活かして集電体を敷かずに電池動作に成功した。これにより表面が極めて平坦なモデル電極作製を可能とした。この結果から、今後はX線CTR散乱等の界面構造評価に応用し、電池動作時における界面構造変化と界面抵抗の相関を捉えるモデル電極の利用として期待される。LiCoO2モデル電極上に様々なガス種を導入した結果、界面抵抗増大に影響を及ぼすのはH2Oであることが明らかになった。さらに、界面抵抗増大の要因を明らかにしたのみならず、このH2Oで汚染された電池素子のアニール処理によって界面抵抗は改善できることが明らかとなった。絶縁体ナノ層コーティングによって界面抵抗起源探索を行った結果、Liイオン伝導体でない材料を固体電解質/電極界面に導入しても電池動作できることが明らかになった。今後は界面抵抗の定量評価のみならず、電気化学反応時の界面構造評価と併せて研究を進めていく予定である。LiCoO2モデル電極においては集電体との界面抵抗を界面ダイポールエンジニアリングによって低減できることを明らかにした。この結果は電気化学と半導体物理の知見の融合であり、この研究を通して全固体Li電池の高性能化にむけて、電極/集電体界面抵抗も今後重要な課題となり得ることを示唆している。 以上より、当初予定していた研究成果を順調に進展している。さらに、電極/集電体界面抵抗起源探索まで研究を展開させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに固体電解質/電極界面にナノ層を導入するための、極めて界面抵抗の低い正極モデル電極作製に取り組んできた。さらに、様々なガス種のうちH2Oが界面抵抗増大起源であることを見出した。今後はこのモデル電極上に様々な絶縁体ナノ層を導入し界面抵抗を定量的に評価することで界面抵抗起源に迫る。大きく分けて二つの展開を今後予定する。 ①:Liイオン伝導体ナノ層被覆による界面抵抗定量評価。 ②:無キャリア絶縁体ナノ層被覆による界面抵抗定量評価および界面におけるLiイオン伝導機構の解明 ①においては、これまでにバルク型電極で報告されている材料に着目しナノ層として固体電解質/電極界面に導入する。例えば LiNbO3、LiTaO3、Li2ZrO3、Li7La3Zr5O12、LixLayTiO3(LLT)、Li4SiO4、Li2CO3、LiAlO2等を界面に導入する。 ②においては、Liイオンのキャリアがないにも関わらず電池性能改善として機能することが報告されている絶縁体に着目する。それら絶縁体をナノ層として固体電解質/電極界面に導入し、界面抵抗の定量評価、および界面構造評価を行うことでLiイオン伝導機構の解明に迫る。候補材料としてAl2O3、ZrO2、MgO等を選択し界面構造を作製する。なお、Al2O3ナノ層導入による電池特性評価はすでに着手し進めている。絶縁体ナノ層導入した場合における電気化学反応時の界面構造を捉えるために、X線CTR散乱等も検討していく。
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