研究課題/領域番号 |
18K14317
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
清水 雅裕 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (90780601)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Zn析出-溶解 / 界面活性剤 / 水晶振動子マイクロバランス / アリカリ電解質 / ZnO / 単結晶薄膜 / 吸着・脱吸着 / その場ラマン分光測定 |
研究実績の概要 |
Zn空気電池は従来のリチウムイオン電池の5倍に匹敵する高エネルギー密度を有する極めて有望な蓄電システムであるものの,その負極においては充電時の電流分布の不均一性によりZnが樹枝状に析出し,これが原因となり乏しいサイクル寿命や内部短絡を引き起こすという深刻な問題がある.他方,界面活性剤や有機添加剤は産業界においてめっき物の表面形状・皮膜物性・均一電着性の制御に使用されており,そのノウハウと適切な取捨選択により平滑なZn析出を達成することが期待できる.本研究では,第1回目のZn析出(充電反応)に特に焦点を当て,添加剤を巧みに操ることでZnの析出形態制御に挑戦するとともに,その作用機構を明らかにすることで,Zn空気電池の長寿命化の設計指針の構築を行った.0.25 M ZnO/4m KOH水溶液にカチオン(octadecyltrimethylammonium chloride),アニオン系界面活性剤(polyacrylic acid, trimethyloctadecylammonium chloride)をそれぞれ1 mM添加した.これらの電解質を用いて電流密度:10 mA cm-2,電流容量:10 mA h cm-2の条件で定電流析出させた.アニオン系界面活性剤では,添加剤フリーと同様に苔状形態として析出したものの,四級アンモニウムカチオンを含む塩を加えたものでは,極めて平滑なZnが得らえた.また,長期サイクルにおける充放電試験では,300サイクルにわたって形態に大きな変化はなく容量劣化なしに安定した形態を維持した.
M. Shimziu. K. Hirahara, S. Arai, Physical Chemistry Chemical Physics, 21 (2019) 7045.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定していた平滑化析出を早期に達成することができ,長期サイクルにおける安定性も実証することができた.ゼータ電位測定および速度論的解析から四級アンモニウムカチオンがZn表面に吸着し,過度な電析反応を抑制することで沿面成長が促されることを明らかにした.また,そのカチオンの嵩高さが平滑化析出に大きく関係することが分かった. M. Shimziu. K. Hirahara, S. Arai, Physical Chemistry Chemical Physics, 21 (2019) 7045.
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今後の研究の推進方策 |
四級アンモニウムカチオンを添加して得られる平滑化析出のメカニズムについて,水晶振動子電極を用いて,そのカチオンの吸着挙動の電位依存性を調査する.また,放電時に生成するZnOについて,充放電試験条件との関係をその場ラマン分光測定と水晶振動子電極を用いて明らかにすることを予定している. 平滑化析出を早期に達成したことから,当初予定していたアルカリ電解質以外に濃厚水溶液も検討している.最終年度では,空気正極や酸化物正極を組み合わせたフルセル動作も検討している.
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