研究実績の概要 |
前年度までに,従来のアルカリ電解質(0.25 M ZnO/4 M KOH)に四級アンモニウム塩(trimethyloctadecylammonium chloride: N111,18)をわずか数mM添加するのみで,Znの析出形態を極めて平滑にすることに成功している.また,Zn/Zn金属対称セルを用いた析出-溶解試験において,1000サイクル(200 h)の長期サイクルにおいて高い安定性を達成した. 本年度は,その析出平滑化のメカニズムに加え,平滑化に効果のあったアンモニウムカチオンのアルキル鎖長依存性を調査した.アニオン性や非イオン性の界面活性剤などを添加した場合では析出形態にはほとんど影響しなかった.ゼータ電位測定によりそれぞれの添加イオンの擬似的なイオン性の評価を実施したところ,N111,18のみ正の電荷を示すことを明らかにした.このことから,平滑化のメカニズムについて次のように考察した.デンドライト成長や苔状成長の原因となる析出初期に形成される突起状Znでは,周囲よりもより負に帯電した状態であり,静電相互作用に基づいて添加カチオンが吸着し,その領域におけるZnの析出反応を阻害し,沿面成長を促したものと考えられる.実際に,N111,18を添加したものでは,未添加と比較して析出の電荷移動反応の交換電流密度が大きく低下しており,N111,18が過度な析出反応を抑制したことが明らかとなった.またアルキル鎖長依存性について調査したところ,鎖長が8以上(N111,8)において析出物が平滑になることが分かった.鎖長が大きくなるについて析出の電荷移動抵抗が大きくなったことから,析出形態の制御にはある程度嵩高いカチオンでなければ有効に機能しないことも分かった. M. Shimizu et al, Journal of The Electrochemical Society, 166(10) A2242.
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