研究実績の概要 |
本研究の目的は、新規な蓄電池であるカリウム二次電池の構築を目指し、イオン伝導性および電気化学的安定性に優れたイオン液体電解質を開発することである。本研究者は既にFSAアニオンをベースとしたK[FSA]-[C3C1pyrr][FSA]イオン液体に注目し、カリウム二次電池用電解質として比較的良好な物理化学的性質を示すことを報告した。一方で、実用化を目指す上では、さらなる電解質の高機能化が必要である。 本年度は、K[FSA]-[C2C1im][FSA]イオン液体に注目し、その諸物性を明らかにした。モル分率x(K[FSA]) = 0.20について、室温におけるイオン伝導率は約10 mS cm-1であった。この値は、従来のK[FSA]-[C3C1pyrr][FSA]イオン液体の2倍以上であり、かつ有機溶媒系電解質と同水準の値であった。また、M[FSA]-[C2C1im][FSA] (M = Li, Na, K)について、異なるアルカリ金属間での物性比較を行ったところ、カリウム系電解質のイオン伝導率は、ナトリウム系のそれより高く、リチウム系と同等であることが分かった。 さらに、本研究者がすでに報告しているK[FSA]-[C3C1pyrr][FSA]イオン液体を電解質に用いて、スズ負極の電気化学的挙動を調べた。その結果、50サイクルにわたって安定した充放電容量が得られることが分かった。 今後は、カリウム系イオン液体の開発と並行して、開発済の電解質を用いた電池試験を行っていく予定である。
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