研究実績の概要 |
2019年度は、カリウム二次電池用電解質として既に報告したK[FSA]-[C3C1pyrr][FSA]イオン液体を用いて、スズ負極の作動を試みた。室温(298 K)における充放電試験の結果、理論容量226 mAh/gに対して約190 mAh/gの初回容量が得られた。また、充電状態の電極をX線回折により分析したところ、KSn相の形成が確認された。また、100サイクル後における容量維持率も93%程度であり、既報の有機溶媒系電解液を用いた際の結果と比較しても、非常に優れた負極特性を示した。 さらなる電池作動温度範囲の拡張を目指し、非対称イオンであるFTAをベースとしたイオン液体K[FTA]-[C4C1pyrr][FTA]の開発を行った。示差走査熱量測定(DSC)では過冷却挙動を示し、熱重量測定(TG)ではFSA系イオン液体より熱分解温度の上昇が確認されたため、FSA系イオン液体と比べて液相温度領域の拡張に成功した。さらに、他のアルカリ金属イオンを電荷担体に用いたイオン液体との物性比較を行うために、M[FTA]-[C4C1pyrr][FTA] (M = Li, Na, K, Rb, Cs)について、イオン伝導率・粘性率・密度・電気化学窓を測定した。その結果、イオン伝導率および電気化学窓の序列はいずれもNa系<Li系<K系<Rb系<Cs系となり、単純なイオン間相互作用では説明できないことが明らかとなった。
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