研究実績の概要 |
再生可能エネルギー由来の電力を使った水電解による水素生成は,次世代のエネルギー運用において必要不可欠な技術である.しかしながら,水の4電子酸化を伴う酸素生成反応(OER)の進行に必要となる大きな過電圧が,その実用化を妨げる要因となっている.低い過電圧でOERを進行させるために様々な電極材料が開発されてきたが、今だ実用化に十分な性能は達成されていない。本研究は、新規な電極触媒として層状複水酸化物(LDH)に金属ナノ粒子を担持することにより、低い過電圧でOERを進行させる金属ナノ粒子担持LDHナノシート(NPs /LDH-NSs)電極触媒を開発することを目的とする。 2価の金属イオンとしてCo2+, Ni2+, Zn2+, 3価の金属イオンとしてMn3+, Co3+, Fe3+, 4価の金属イオンとしてTi4+を含むLDHを共沈法および水熱法で合成した。LDHから剥離したナノシートにAuナノ粒子の担持し、OER活性を調べたところ、LDHの構成金属によってその影響は異なり、Co2+, Ni2+を含むLDHにおいて活性の向上が見られた。この活性向上は、ナノシートとナノ粒子間の電荷移動による電子状態の変化によるものと考えられる。また、Pt, Irナノ粒子を担持してOER活性の影響を検討したところ、いずれのナノ粒子を担持した場合も、Auナノ粒子と同様にOER活性の向上が見られた。Ptナノ粒子を担持した場合は、Auナノ粒子を担持した場合とほぼ同程度の活性向上がみられたのに対し、Irナノ粒子を担持した場合は、他のナノ粒子を担持した場合よりもOER活性が大きく向上した。IrはOER活性を示す金属であることから、OER活性なナノ粒子を担持することで、さらなる高活性化が可能であることが明らかになった。
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