研究実績の概要 |
NH3はCO2を排出しない石油代替燃料として近年注目されており,ガスタービンや工業炉等への応用研究が行われている[1,2].一方,NH3は有害かつ難燃性であり,燃焼によって熱力学的に生成するthermal NOx濃度は低いが,速度的にfuel NOxやN2Oの生成反応が優位となる問題点を有する.そのため,NH3を燃焼器に応用するには燃焼開始温度の低下と無害なN2への選択的燃焼ならびに排気浄化が求められる.このようなNH3燃料の課題を解決するため,われわれは触媒燃焼法に着目した. これまで,NH3を低温域から燃焼可能で低N2O/NOx選択性を示す金属酸化物で構成される触媒を開発してきた[3].しかしながら,NH3燃焼反応完結後(高温域)でNOが生成する問題が解決できていない.そこで本研究では,燃焼反応における酸素(O2)濃度をNH3分解領域まで下げるNH3-リッチ(rich)条件の燃焼反応を検討した.様々な担持触媒を合成し,そのNH3-rich条件の燃焼反応特性を評価した. 種々の担持触媒を合成し,そのNH3-rich条件の燃焼反応特性を評価したところ,比較的高いO2分圧(λ=0.90)では,Cu/3A2Sが高活性とN2選択性を両立し,NO/N2Oの生成をほとんど抑えた.λ=0.75では,Cu, Pt, Rh/Al2O3が高活性と高N2選択性を示した.中でも,Cu, Pt/Al2O3が他の遷移金属の中でもそれらを両立した.これに対して,λ=0.60ではIr/Al2O3が高活性・低N2O/NO選択性を示した.以上の結果は,NH3分解反応とは異なる傾向を示したことから,O2の影響ならびに触媒構造や酸化状態の違いが要因であると示唆された.
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