研究課題/領域番号 |
18K14326
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
日隈 聡士 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (70714012)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アンモニア / 酸化銅 / 酸化アルミニウム |
研究実績の概要 |
本年度は、高活性なCuOx/Al2O3の熱処理前後の触媒の局所構造とNH3燃焼反応特性を評価した。担体に6 wt% CuOに相当するCu(NO3)2を含浸後、空気中600 °C、3 hで焼成して担持触媒を得た。得られた触媒は耐熱性を評価するため空気中900 °C、 100 h熱処理した。キャラクタリゼーションにはXRD、 XAFS、 HAADF-STEM/EDX、 N2吸着、 H2-TPRを使用した。NH3触媒燃焼特性は流通反応装置を用いて昇温法で評価した。900 °C熱処理後のCuOx/Al2O3の局所構造をHAADF-STEM/EDXによって観察すると、Al2O3上のCuOx粒子は数nm~100 nmの幅広い粒径分布を示した。XRDおよびXAFS測定より、調製後のCuOx/Al2O3ではCuO、900 °C熱処理後ではCuAl2O4の存在が確認された。熱処理によってCuOはAl2O3担体と固相反応を引き起こしてCuAl2O4を形成したと考えられる。一方、比較試料のCuOx/Al2O3(900 °C)ではγ-Al2O3の一部がα相へと相転移した。いずれの触媒も類似のNH3転化曲線を示し、燃焼がほぼ完結する温度以上においてのみNO生成が認められた。これはAl2O3の&相転移の影響であると推定される。これに対してCuOx/Al2O3の場合、熱処理によってNH3転化曲線は若干高温側にシフトした。一方、熱処理後のCuOx/Al2O3(900 °C)のT10は、CuOx/Al2O3(900 °C)より約30 °C高い値を示したが、T90におけるN2の選択率の序列はCuOx/Al2O3(900 °C) > CuOx/SiO2(900 °C) > CuOx/Al2O3(900 °C)となり、調製後の触媒同様、CuOx/Al2O3の優位性が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CuOx/ Al2O3触媒を湿式含浸法によって調製した。調製した触媒はXRD測定で結晶構造を解析し、SEMなどを用いて担体やCuOx等の触媒の分散状態を観察した。XAFS測定によって、NH3燃焼反応前後の局所構造と酸化状態を調べた。触媒反応については、ガス濃度依存性を検討して燃焼活性・生成物選択性の変化を確認した。相関関係については、担持CuOx触媒を用いたNH3燃焼反応は反応中でNH3と格子酸素が反応、その後副生したNOと未反応のNH3が反応する二段階で進行することを明らかにした。以上の検討により、CuOx/Al2O3触媒がNH3燃焼反応に対して高活性かつ、高N2選択性を示すことを明らかにした。これらの本年度の成果は招待講演2件、国内会議発表2件として報告し、査読論文2報採択されおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、エネルギーキャリアならびに自然冷媒として使用されているNH3の現地浄化を想定した『触媒燃焼浄化装置やそれ専用の触媒などを開発』する。NH3をO2によって浄化する反応器とハニカム触媒を合成する。反応試験を検討し、活性と選択性を評価する。装置は全国各所で使用できるように共通の電源にする。NH3 浄化触媒燃焼装置を試作するため、触媒反応管・配管接手・反応炉等の部品と材料を選定して構築する。試作した触媒燃焼浄化装置にガス濃度分析装置を接続して、実際の反応試験を行う。実用を想定したNH3冷媒の浄化試験を実施する。以上の目標に到達し、最終目標『高性能NH3触媒燃焼浄化装置開発』を達成する。
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