研究課題
持続可能なエネルギー社会の実現に向けて、蓄電デバイスの技術革新が求められている。資源が無尽蔵な“カリウム”を利用した“カリウムイオン二次電池”は、希少金属や有害元素を含まない“元素戦略電池”として期待できる。しかも、カリウムの酸化還元電位は有機電解液中ではリチウムよりも卑であり、リチウムイオン電池と同等かそれ以上の蓄電エネルギーが期待できる。本研究では、電極材料面でのブレークスルーを起こすべく、電池材料として遷移金属とのポリオキソ酸を骨格構造とする、カリウム化合物を探索し、リチウムやナトリウムよりも低いルイス酸性を利用した“高速でカリウムを脱挿入可能な”ポリアニオン系正極材料の創製を目的とする。初年度である平成30年度に一連の材料合成と電池特性の評価から、既報のカリウム電池正極材料とは結晶構造の異なるバナジウムリン酸カリウムが優れたカリウム電池特性を示すことを見出した。本年度は、平成30年度に見出したバナジウムリン酸カリウムの詳細な電気特性測定を行うとともに、充放電中のカリウム脱挿入によって生じる結晶構造の変化をオペランドX線回折測定によって解明した。その結果、カリウム量の異なるバナジウムリン酸塩が中間相として存在し、多段階の構造変化によってカリウム脱挿入が進行することがわかった。また、各相の結晶体積はほぼ等しいことがわかり、この極めて小さな体積変化がバナジウムリン酸カリウム材料の高出力特性と深く関係していると予想される。更に本研究では、オキソ酸としてリン酸とシュウ酸を複合した、バナジウムシュウ酸-リン酸カリウムを新奇に合成し、カリウム電池の充放電特性も長寿命で、極めて高出力特性が優れていることを見出した。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (28件) (うち国際学会 17件、 招待講演 11件)
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