本研究では,酸化物上での酸素還元反応に対する活性支配要因を特定するために酸化物ナノシートを用いたモデル電極にて検討を行ってきた.2019度では,種々の条件にて還元処理を行った酸化チタンナノシートの酸素還元活性の評価と,その結晶構造の解析を行った. 電気化学測定は,単層の酸化物ナノシートからなるモデル電極を作製し,三極式の電解セルを用いて実施した.酸素還元活性は,反応開始電位により評価した.還元処理前後の形態をAFMで観察し,結晶構造を全反射XAFS法およびin-plane XRDにより評価した. 本研究にて行った還元処理条件では,還元処理後においても酸化チタンナノシートは,シート状の形態を保持していた.しかしながら,シート厚さは,処理条件に依存して増加した.これは,全反射XAFS法やin-plane XRDによる構造解析の結果を加味すると,レピドクロサイト構造から,アナターゼ構造に徐々に相転移したことに起因する.また,還元処理条件を変えることで,結晶構造が少しづつ歪みながら,レピドクロサイト構造からアナターゼ構造に転移していることも見出した. 還元処理条件の違いにより,観察された酸素還元反応の開始電位が変化した.本研究において,還元処理により影響を受ける項目は,結晶構造とチタン原子の価数の二項目である.この二項目と酸素還元開始電位を見比べると,結晶構造の変化の方が酸素還元開始電位に影響を与えているように見受けられた.このため,酸化物上での酸素還元反応は,結晶構造が歪んだサイトと強く関連していると思われる.
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