研究課題/領域番号 |
18K14330
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
村瀬 裕貴 名古屋大学, 理学研究科, 研究員 (10814486)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | RNA結合性低分子 / 分子認識 / 水素結合 / RNA高次構造 / pre-miRNA |
研究実績の概要 |
RNAはヘアピン構造やバルジ構造など様々な高次構造を形成し、遺伝子発現に多大な影響を与えることが知られている。そのためRNAの高次構造は新たな創薬ターゲットとして注目されており、RNAの高次構造に選択的に結合する低分子リガンドは盛んに研究・開発されている。しかしながら、RNAの構造的多様性から、特定の高次構造に結合する分子の設計は非常に困難であり、DNA結合分子と比較してもその数はまだまだ少ないのが現状である。そこで本研究では、RNAの高次構造、特にpre-miRNAなどに代表されるヘアピンループ構造を標的とする二つの新規基盤分子の開発を行った。一つ目は1,3-ジアザフェノキサジン環(G-clamp)を基本骨格としたG-clamp-monomerであり、モデル配列を用いた実験において、ヘアピン内部のグアニンに選択的に結合(解離定数 Kd = 200 nM)することがわかった。二つ目は、分子内にG-clampユニットを二つもつG-clamp-dimerであり、ヘアピン内部の近接する二つのグアニンに非常に強く結合(Kd = 9.0 nM)することがわかった。興味深いことに、G-clamp-dimerは RNA結合に伴い、蛍光強度が増大するOFF/ON型の応答性を示すことが見出され、蛍光プローブとしての展開も期待される。 これらの分子は、RNAに結合する新たな基盤構造としての使用が期待され、今後様々な機能性分子とのコンジュゲートにより多様な機能付加が可能と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
G-clampを基本構造としたリガンドの設計・合成を行い、良好な全体収率にて目的物を得た。RNA結合能評価は、UVスペクトル、CDスペクトル、蛍光スペクトル測定により評価した。その結果、RNA高次構造中のグアニンに選択的に結合することが確認された。さらに、pre-miRNAとその変異配列を使用した実験において、ヘアピン > バルジ, オーバーハング >> 二本鎖の順で構造選択性が確認された。また、諸実験において、G-clamp-dimerの OFF/ON型蛍光応答性のメカニズムについての重要な知見を得ることができており、これをもとに有効な誘導体の設計が可能であると考えられる。以上の結果を踏まえ、順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
G-clamp構造を基本構造として、リンカー長の異なるリガンドの合成や、他機能分子とのコンジュゲートを想定した官能基修飾などを行い、リガンド構造とRNA結合能の構造活性相関を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は所属研究室の所持していた器具・試薬・溶媒等の使用により、支出を抑えることができた。次年度は、これらの消耗品等の購入に前年度未使用額を使用する予定である。
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