研究課題/領域番号 |
18K14332
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤野 公茂 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (00772378)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 翻訳系 / リボソーム / β-アミノ酸 / ペプチド |
研究実績の概要 |
本研究計画は、①変異リボソームライブラリの作製、②β-アミノ酸を導入可能な基質拡張リボソームの選択、③基質拡張リボソームのβ-アミノ酸導入活性評価、の3段階からなる。初年度である2018年度に、①ライブラリ作製の過程を完了し②へと進む予定となっていた。実際の経過として本年は、まず、リボソームの活性に重要と思われる22塩基にランダム変異を導入した合計約16万種類の変異導入リボソームライブラリを作製した。これにより①の過程を完了した。この過程で使用した変異リボソーム精製法は、本研究で用いるために従来法を高速化した新手法であり、従来法と比較して約1/3の時間で変異リボソームを精製することが可能になった。また、次年度以降の、③基質拡張リボソームのβ-アミノ酸導入活性評価の過程においても、この手法を用いることで、迅速な基質拡張リボソームの精製・活性評価が行えると考えている。この変異リボソーム精製法については、第12回バイオ関連化学シンポジウム、第41回分子生物学会年会において、ポスター発表を行った。続いて、非タンパク質性アミノ酸がペプチドへ導入された場合のみ、これを触媒したリボソームが選択的に回収される系の構築を行なった。モデル実験を行い、実際に、アミノ酸の導入効率に応じたリボソームの回収が可能であることを確認した。このリボソーム回収系については、第12回バイオ関連化学シンポジウム、第41回分子生物学会年会において、ポスター発表を行った。現在は、この系を用いることで、①で構築したリボソームライブラリから、β-アミノ酸を導入可能なリボソームを選択する過程を進めている。現在までの進捗は、当初の計画の通りであると判断しており、2019-2020年度に、②③のサイクルを経ることで、β-アミノ酸の導入効率の高い基質拡張リボソームの取得が可能であると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画は、①変異リボソームライブラリの作製、②β-アミノ酸を導入可能な基質拡張リボソームの選択、③基質拡張リボソームのβ-アミノ酸導入活性評価、の3段階からなり、初年度である2018年度に、①を完了し、②へと進む、予定となっていた。実際の経過としては、本年度において、まず、①変異リボソームライブラリの作製を完了した。具体的には、リボソームのペプチド結合形成活性に重要と思われる22の塩基を選定し、ランダムな変異を加えることで、合計約16万種類の変異導入リボソームを含むライブラリを取得した。この過程で使用した変異リボソーム精製法は、本研究で用いるために従来法を高速化した新手法であり、従来法と比較して約1/3の時間で変異リボソームを精製することが可能になった。続いて、②β-アミノ酸を導入可能な基質拡張リボソームの選択の過程へ進んだ。具体的には、任意に設定した非タンパク質性アミノ酸がペプチドへ導入された場合のみ、これを触媒したリボソームが選択的に回収される系の構築までを完了している。この系を用いたモデル実験では、タンパク質性アミノ酸を用いると高効率でリボソームが回収されたのに対し、β-アミノ酸を指定した場合には、リボソーム回収効率が非常に低くなったという結果を得ており、系が設計通り機能することが確認できた。現在は、この系を用いることで、①で構築したリボソームライブラリから、β-アミノ酸を導入可能な基質拡張リボソームを取得する過程を進めている。以上より、現在までの進捗は、当初の計画の通りであると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画は、①変異リボソームライブラリの作製、②β-アミノ酸を導入可能な基質拡張リボソームの選択、③基質拡張リボソームのβ-アミノ酸導入活性評価、の3段階からなっている。2019年度には、現在進行中である、リボソームライブラリからのβ-アミノ酸を導入可能な基質拡張リボソームの取得を完了させる。その後、2019-2020年度にかけて、②③の過程を繰り返し行い、目標とするβ-アミノ酸を導入可能な基質拡張リボソームを取得する予定である。具体的には、構築済みの4つのリボソームライブラリから、②の過程でβ-アミノ酸導入活性の改善した変異体を選び出し、配列解析および、③のβ-アミノ酸導入活性評価により、特に重要な塩基配列を特定する。この結果を踏まえ、重要な塩基に集中的に変異を加えたリボソームライブラリを再構築し、再度②③の過程を行うことで、β-アミノ酸の導入効率のより高い変異リボソームを得ることができると考えている。有望な変異リボソームに対しては、③の過程の続きとして、それぞれのリボソームを個別に大腸菌で発現・精製し、β-アミノ酸導入活性の詳細な評価を行う。評価のポイントは、1) 天然リボソームで導入できない側鎖を持つβ-アミノ酸を導入できるか、2) 連続的な導入ができるか、の2点である。充分な活性が得られていれば、基質拡張リボソームの作製は完了である。
|