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2019 年度 実施状況報告書

β-アミノ酸を導入可能な基質拡張リボソームの創製

研究課題

研究課題/領域番号 18K14332
研究機関名古屋大学

研究代表者

藤野 公茂  名古屋大学, 工学研究科, 助教 (00772378)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードリボソーム / 無細胞翻訳系 / β-アミノ酸 / ペプチド
研究実績の概要

本研究計画は、1.変異リボソームライブラリの作製、2.β-アミノ酸を導入可能な基質拡張リボソームの選択、3.基質拡張リボソームのβ-アミノ酸導入活性評価、の3段階からなる。2018年度には、段階1を完了し、さらに、アミノ酸導入活性に基づいてリボソーム選択法を開発した。2019年度には、段階1で作製したリボソームライブラリから、β-アミノ酸の導入活性に基づくリボソームの選択を試み(段階2)、得られた変異リボソームを精製したものを用いてβ-アミノ酸導入量を測定した(段階3)。その結果、野生型以上にβ-アミノ酸導入活性の改善したリボソームは得られていないものの、リボソーム選択において回収率の高いリボソームほど実際の活性も高いことが分かった。この結果は、我々の開発したリボソーム選択法が、リボソームライブラリから、活性の高いリボソームを効率的に拾い上げる方法として有効であることを示すとともに、現在使用しているライブラリには、野生型以上にβ-アミノ酸導入活性の改善したリボソームがそもそも存在しなかった可能性を示す。今後は、ライブラリの変異導入部分を拡張し、β-アミノ酸導入活性の改善したリボソームの取得を目指す。
この研究の過程では、様々なβ-アミノ酸をtRNAにアミノアシル化する必要がり、人工リボザイムの触媒するアミノアシルtRNA合成を利用している。この際に重要なのは、事前に、β-アミノ酸毎に最適な反応条件を決定しておくことであるが、従来は酸性のβ-アミノ酸ではそのアミノアシル化効率測定が難しいという問題があった。そこで我々は、フレキシザイムの最小基質RNAを用いた、新たなアミノアシル化効率測定法を開発した。この内容については、第13回バイオ関連化学シンポジウム、第42回分子生物学会年会において、ポスター発表を行い、さらに、国際誌Chembiochemに査読付き論文として掲載された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究計画は、1.変異リボソームライブラリの作製、2.β-アミノ酸を導入可能な基質拡張リボソームの選択、3.基質拡張リボソームのβ-アミノ酸導入活性評価、の3段階からなる。段階1は、2018年に完了する予定であり、予定通り進行した。段階2.3.については、2019,2020年度に行う予定となっていた。本年は、段階1.で作製したリボソームライブラリから、β-アミノ酸の導入活性を基準とし、基質拡張リボソームの選択を試みた(段階2)。我々の開発したリボソーム選択法では、各変異リボソームのβ-アミノ酸導入活性を、選択における回収量として数値化する。そこで、これに基づいて、特にβ-アミノ酸の導入活性が高いと考えられる変異リボソームを発現し、β-アミノ酸導入量を測定した(段階3)。その結果、選択における回収量と、β-アミノ酸導入量の実測値とは、相関することが明らかになった。この結果から、我々の開発したリボソーム選択法は、非常に多様なライブラリから、活性の高いリボソームを選択する方法として有効であることを示す。しかし一方で、ライブラリ内で最も回収の高い変異リボソームでも、実際には野生型以下のβ-アミノ酸導入量しか持たないことが分かった。この結果は、今回用意したライブラリ内に野生型以上のβ-アミノ酸導入活性を持つリボソームが初めから存在しなかった可能性を示す。この原因は、ライブラリ構築において変異を導入する塩基が、1つのライブラリにつき8塩基以下と限定的な設計にしたため、野生型と大きく構造が異なる変異リボソームが存在しなかったと考えられる。この点については、新たなリボソームライブラリの準備を開始している。現在、段階2,3の手順は確立できており、リボソーム選択法が機能することも確認できているため、概ね順調に進捗しているものと言える。

今後の研究の推進方策

当初の研究計画は、1.変異リボソームライブラリの作製、2.β-アミノ酸を導入可能な基質拡張リボソームの選択、3.基質拡張リボソームのβ-アミノ酸導入活性評価、の3段階からなる。2020年度には、2.3.の過程を繰り返し行い、目標とするβ-アミノ酸を導入可能な基質拡張リボソームを取得する予定である。ただし、現状のリボソームライブラリには、β-アミノ酸の導入活性が野生型以上に改善した変異体は含まれていない可能性が高いことが、2019年の結果から分かった。そこで、変異を8塩基ずつに分割して導入する現在の設計を変更し、変異導入箇所を拡張した新しいリボソームライブラリの構築を開始している。
具体的には、リボソーム活性中心の塩基から、22箇所の変異導入位置の候補を選び出し、最重要と位置付けたグループA(13塩基)から、重要度の下がるグループB(3塩基)、グループC(6塩基)と、3つのグループに分けた。重要度の判断は、先行研究での変異導入の結果と、2019年までに得られた知見をもとに行った。ここから、Aのみに変異を集中するライブラリ1、A,Bに変異導入箇所を拡張したライブラリ2、A,B,C全てに変異を最大化したライブラリ3を構築し、β-アミノ酸の導入活性の高いリボソームを選択する計画である。選択操作の有効性は、2019年にすでに確認されており、同様の手順で新しいライブラリに含まれる、最も活性の高いリボソームが取得できると考えている(段階2)。
有望な変異リボソームに対しては、それぞれのリボソームを個別に大腸菌で発現・精製し、β-アミノ酸導入活性の詳細な評価を行う(段階3)。評価のポイントは、1) 天然リボソームで導入できない側鎖を持つβ-アミノ酸を導入できるか、2) 連続的な導入ができるか、の2点で、充分な活性が得られていれば、基質拡張リボソームの作製は完了である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Exploring the Minimal RNA Substrate of Flexizymes2019

    • 著者名/発表者名
      Fujino Tomoshige、Kondo Taishi、Suga Hiroaki、Murakami Hiroshi
    • 雑誌名

      ChemBioChem

      巻: 20 ページ: 1959~1965

    • DOI

      https://doi.org/10.1002/cbic.201900150

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] フレキシザイムの最小RNA基質の探索2019

    • 著者名/発表者名
      藤野公茂,近藤太志,菅裕明,村上裕
    • 学会等名
      第13回バイオ関連化学シンポジウム
  • [学会発表] フレキシザイムの基質となる最小RNAの探索2019

    • 著者名/発表者名
      藤野 公茂,近藤 太志,菅 裕明,村上 裕
    • 学会等名
      第42回日本分子生物学会年会

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公開日: 2021-01-27  

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