研究課題/領域番号 |
18K14336
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
朝比奈 雄也 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (10737232)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ペプチド / 難溶性 / 可溶化 / ピコリン骨格 |
研究実績の概要 |
本研究は、難溶性ペプチドの溶解性を高める可溶化タグの開発を目的として行っている。あるタンパク質の部分ペプチドや膜タンパク質の膜貫通ドメインなどは、自身の疎水性により、高い凝集性、難溶性を示す。こういった難溶性ペプチドの調製は困難を極め、その機能解析も遅れている。これらペプチドの特徴は、ペプチド鎖に電荷が少なく、水溶液に対する親和性が極めて低いことであると考えた。そこで本研究では、ペプチドの電荷状態を高め、溶解性を向上させるピコリンを母核骨格とした可溶化タグの開発を行うことにした。 まずは、目的のピコリン骨格を持つ可溶化タグの合成を行った。1つ目の合成ルートでは、イソニコチン酸エステルを出発原料として、アリルグリニャール試薬により、アリル基が2つ導入された3級アルコールを調製した。次に、2つのアリル基にヒドロホウ素化と続く酸化反応により、末端アルコール体へと変換した。しかし、この反応では、ホウ素付加の位置選択性が低く、複数の異性体混合物を与える結果となった。保護基の導入等を行い、選択性が改善されるかどうか、検討を行ったものの、いずれも良好な結果を得ることはできなかった。そこで、異性体混合物を分離し、メチルスルホン酸エステルへ誘導した後、続けて、アミノ基の導入を試みた。しかし、この工程では、ピリジン窒素の求核攻撃によるポリマー化が進み、窒素求核剤を変更しても、収率よく目的物を得ることはできなかった。一部、目的の可溶化タグまで誘導することができたが、出発原料からの総収率は、約1-2%と極めて低く、実用に耐える合成ルートではないことが判明した。 そこで、現在は、アミノ基のシントンを予めグリニャール試薬に導入し、イソニコチン酸エステルと反応させる第二経路を現在検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の本筋である、新規可溶化タグの効果を検証する段階まで到達することができていない。加えて、可溶化タグの構築も完了しておらず、合成ルートの開拓に難儀している状態である。よって、現状、本研究計画はかなり遅れていると判断せざる負えない。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、可溶化タグの構築と、アミノ酸誘導体への導入を最優先目標として計画を進める予定である。現在は、ピコリンに導入したN-ジアリルアミンの脱保護に苦戦している状態であるため、その反応条件の最適化を行うと共に、別の合成経路として、アリル基をラジカル的に官能基化した後、種々保護基変換を経て、可溶化タグの合成を行おうと考えている。次に、グルタミン酸側鎖のカルボン酸に可溶化タグの導入を行い、次に、固相合成法に応用することで、本可溶化タグが、固相合成法に利用可能なのかどうか検証する。最後に、難溶性ペプチドに本可溶化タグを導入し、その効果を検証することを行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用した溶媒や消耗品をまだ購入しなかったため、来年度はこれらの補充に執行する予定である。
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