研究課題/領域番号 |
18K14345
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
保野 陽子 九州大学, 理学研究院, 助教 (40736500)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ナトリード / 全合成 / 13員環シクロファン / 分子内環化反応 |
研究実績の概要 |
前年に引き続き、ナトリードの全合成研究に取り組んだ。まず13員環シクロファン部の合成を試みた。シクロファン部の構成アミノ酸のうち、β-ヒドロキシドーパおよび、β―ヒドロキシイソロイシン等価体であるアジリジンが前年に合成を完了した。文献の手法に従い、得られた両アミノ酸の連結を試みたところ、位置および立体選択的に進行し、望みのジペプチドを単一の生成物として得た。次いでアミノアルコール部位の酸化とバリンの連結を経て、環化前駆体を合成した。 次に分子内環化反応による13員環シクロファンの構築を検討した。本反応は、生成物がひずんだ構造を有するために、環化が進行しにくいことが予想された。実際に、基質の溶液に縮合剤を添加して反応を行うと、基質の二量化が進行し、望みのシクロファンは少量であった。そこで副反応を抑えるため、縮合剤の存在下で基質の溶液を少しずつ滴下する手法にて環化反応を行うこととした。縮合剤、溶媒、溶液濃度を検討の結果、1mMに希釈したEDCIとHOBtの溶液中に、環化前駆体の溶液を数時間かけて滴下することで、二量体の副生が抑えられ、13員環シクロファンを中程度の収率で得ることに成功した。 得られた13員環シクロファンに対し、N-メチル化、グルタミン酸側鎖の導入とアセチレンの還元、脱保護を行うことで、ナトリードの推定構造の全合成を達成した。現在逆相HPLCによる精製を行っている。今後、合成品と天然物の各種スペクトルデータを比較することで、天然物の絶対配置の決定を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、期間内にナトリードの全合成を達成した。本成果は現在特許出願中である。これにより、2020年度の前半に天然物の構造決定を行えると想定している。また構造活性相関研究のためのアナログの合成も開始しており、次年度中に合成し、活性評価を行える見込みである。よって順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
合成したナトリードの分取をすすめ、合成品と天然物の各種スペクトルを比較することで、天然物の構造決定を速やかに完了する。またナトリードの構造活性相関研究を展開する。まず水酸基を除去したアナログを合成する。アナログや類縁天然物ウスチロキシンDのアストロサイト増殖活性を評価することで、水酸基やグルタミン酸側鎖の活性発現における役割を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定されていた学会や打ち合わせが中止となったため、旅費や学会参加費が予定より下回った。2020年度は、天然物やアナログの合成と活性評価試験を行う。そのため合成試薬、化合物の精製にかかる溶媒などの消耗品の購入を計画している。また研究成果を発表するための学会出張を予定している。
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