研究課題
本年度はノシル骨格を母核とし、ジアジリン基を導入したノシルジアジリン基(Nsジアジリン)の合成を検討した。当初の計画通り、4-クロロベンズアルデヒドを原料とし、ニトロ化、ベンジルチオールによるClとの置換反応後、アルデヒドをトリフルオロアセチル基へと変換に成功した。トリフルオロアセチル基は既存法によりジアジリン基へと変換させ、最後にベンジルチオールを酸化させることで、Nsジアジリンへとの変換を試みた。この酸化についてN-クロロスクシンイミドやトリクロロイソシアヌル酸、ヒダントイン等の酸化剤を検討したところ、アセトニトリル、水、酢酸溶媒下、ヒダントインを用いる事で、Nsジアジリンの合成に初めて成功した。Nsジアジリンの光反応基としての有用性を確認するためNsジアジリンをメタノールに溶解させ、1 mMに調製後、250 W、365 nm波長の光照射実験を行なった。ジアジリン基は15分で完全にカルベン形成後、メタノールと反応しメタノール付加体を質量分析で確認することができた。ニトロ基を持たない通常のフェニルジアジリンに比べ2倍ほど速い光分解が確認された。さらにNsジアジリンの特徴である芳香族求核置換反応について検討を行なった。反応の条件として塩基が必要であるが、その塩基について、トリエチルアミンやDBUなどの有機塩基に比べ、炭酸セシウムを使用することで効率良く反応が進むことを確認した。また溶媒についてはTHF、DMF、水などを検討したがTHF溶媒で最も効率よく反応が進むことを確認できた。現在の最適条件においてNsジアジリンのスルホン部位にピペリジンを導入したモデル化合物を用いてベンジルチオールやクマリンチオールによる芳香族求核置換反応を実施したところ、最大70%の収率で進行することを確認した。
2: おおむね順調に進展している
初年度の計画目標をだいたい達成することができたため
今後は、芳香族求核置換反応に用いる、チオール剤の多様化(BODIPYやイオン増強剤)などの検討を行う。さらに、タンパク質を標的とすることから水中に近い条件でも反応が進行することを確認する。これと同時に、モデルタンパク質を用いて、本コンセプトの有用性を確認する。
未使用額が生じたのは今年度の研究計画が予定通り遂行でき、無用な執行は行わず、次年度の研究に役立てようと考えたためであり、次年度の試薬代等に使用する予定である。
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Chemical Communucations
巻: 54 ページ: 12758-12761
10.1039/c8cc05595e