研究課題/領域番号 |
18K14350
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
村井 勇太 北海道大学, 先端生命科学研究院, 助教 (20707038)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ノシル基 / 光アフィニティーラベル / 芳香族求核置換反応 / ジアジリン |
研究実績の概要 |
本年度は昨年度から続いていたノシルジアジリン基(Nsジアジリン)の合成を達成し、合成したNsジアジリン誘導体について、光分解実験、および芳香族求核置換反応(SnAr)によるタグ導入の最適化を検討した。SnArにおいて昨年度は有機溶媒(THF)中での効率的反応条件を確立したが、実践では水溶液中で行うことを鑑み、水中条件での最適化を検討した。その結果、水中においても炭酸セシウムを塩基として用いることで、24時間以内にSnArが大部分進行し、蛍光基としてクマリンやBodipy、イオン増感剤としてアンモニウムカチオンの効率的導入を確認した。特にイオン増感剤を導入した場合、反応系の精製なく、目的化合物の非常に強いイオンピーク(通常に比べ約120倍)が確認できた。 さらにNsジアジリンは、まずモデルとしてBSAタンパク質との光ラベル化効率(非特異的にに、タンパク質への光反応での架橋が可能かを確認するため)を実施した。結果、光照射timeディペンデントによりラベル化割合が増えることを確認し、最大で20%程度のBSAタンパク質との結合を確認することができた。これは光アフィニティーラベル法では従来10%程度のラベル化効率を改善することに成功したことが示唆される。また、光ラベル化後のSnArによるBodipyタグの導入を行なった。こちらもtimeディペンデントによりSnArの反応が進み、24時間後には約78%のBodipy導入が確認された。 このことから本Nsジアジリンは光アフィニティーラベルと、その後に続くSnArによるタグ導入がタンパク質レベルでも可能と実証され、これらの研究内容をEur.J.Org.Chemに纏めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り進めることができ、論文1報に纏めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はNsジアジリンに実際のリガンド(メトトレキサート:MTXや独自に開発したスフィンゴミエリン合成酵素2: SMS2阻害剤)を搭載し、標的タンパク質(それぞれ、ジヒドロよ葉酸還元酵素とSMS2)との光アフィニティーラベルを実施し、ラベル化およびタグ導入を検討する。また従来型のジアジリンとも比較することで、本法の優位性を確認する。 特にSMS2は結晶構造モデルは未だ解かれておらず、肥満や抗がん免疫亢進に関与する創薬ターゲットから、早急なリード開発が望まれている。したがって、独自の阻害剤とSMS2の結合モデルを解明することを最終目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額が生じたのは今年度の研究計画が予定通り遂行でき、無用な執行は行わず、次年度の研究に役立てようと考えたためであり、次年度の試薬代等に使用す る予定である。
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