最終年度は昨年度に合成したノシルジアジリン基(Nsジアジリン)を使用した光ラベル実験に移行した。具体的には脂質代謝酵素であるスフィンゴミエリン合成酵素2(SMS2)と独自に開発した阻害剤の結合様式を解明するものである。はじめに、Nsジアジリン基をリガンドであるセラミドを基本骨格とした阻害剤に導入する検討した。セラミドの長鎖塩基尾部の修飾は阻害能にさほど影響がないという知見から、Nsジアジリン基が導入可能な官能基を構築し、Nsジアジリン基を導入した。in vitroによるアッセイ結果より、Nsジアジリン基導入リガンドのIC50値は150nM(オリジナルは50nM)を示し、阻害活性を保持していることが確認でき、Nsジアジリン基の特徴であるリガンド親和性保持を証明することができた。 次に標的であるSMS2であるが極微量膜タンパクということから安定発現株では十分なタンパク量を確保できなかった。そこでN末またはC末に3xFLAGタグを導入したSMS2を過剰発現させることで十分なタンパク量を確保することに成功した。またSDS-PAGEによる確認では過剰発現SMS2(膜の影響から)は水系への溶解性が非常に悪く、1% triton-X100による超音波破砕を遠心分離後にペレットが残らない程度まで行う必要があった。 現在、過剰発現SMS2のlysateとSMS2阻害剤を搭載したNsジアジリンによる光ラベル化の成功まで確認しており、蛍光タグやイオン増感タグによるSnAr反応を検討している段階である。このことから本助成最終年度期間中に可能であれば予定していたNsジアジリンによるSMS2釣り上げ実験に移行まで進めることができ、新年度は基盤Cにて継続予定である。
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