研究課題
【研究目的】本研究は、神経ペプチド「オレキシン」の覚醒安定化機序の理解を目的とし、オレキシンの活性を任意の部位、タイミングで制御することができる分子ツールの開発を行うものである。【分子設計】オレキシン受容体作動薬は酸性プロトンを保護基で置換することで失活することが分かっており、本官能基に光ケージング基を連結したハイブリッド化合物を分子設計した。ケージング基として紫外光で光開裂する既知のニトロベラトリル(Nv)基と、可視光で光開裂する独自に開発したケージング基AS400をそれぞれ用いた。【合成検討】市販のニトロベラトリルクロリドを用い、薬物をアルキル化することでNv基を有するハイブリッド薬物の合成に成功した(H30)。続いて、薬物とAS400のハイブリッド薬物の合成に着手した。AS400は市販の出発原料から総行程11段階0.3%で合成した(H30)。AS400の水酸基をハロゲン基へと変換し、求核置換反応による連結を試みた結果、新たな生成物の精製が確認されたものの、生成量が少なく構造決定には至らなかった(R1)。AS400は合成収率が低く量的供給が問題であったため、効率的な合成経路の確立を行い、従来法の10倍の効率で合成できる方法を確立してAS400の量的供給 (>1g) に成功した(R1)。現在、連結反応生成物の同定を行っている(R1)。【機能評価】Nv基を有するハイブリッド薬物について、安定性および分光学特性について実験を行った(H30, R1)。光ケージド薬物の0.1 mM DMSO溶液に対し、極大吸収波長である365nmの光を30分照射したところ、HPLC収率56%で薬物が放出されることを明らかにした(H30)。また、マウス脳切片を用いたパッチクランプ実験を行い、ハイブリッド薬物を分散した環流液下で光照射によりわずかながら膜電位が上昇することを明らかとした(R1)。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters
巻: 30 ページ: 126893~126893
10.1016/j.bmcl.2019.126893
巻: 29 ページ: 2655~2658
10.1016/j.bmcl.2019.07.039
Bioorganic & Medicinal Chemistry
巻: 27 ページ: 1747~1758
10.1016/j.bmc.2019.03.010