研究課題
RNAにホスホロチオエート(PS)修飾を導入することで環状RNAの翻訳効率を増加させられないかと考えた。まず最初に、PS修飾を導入した直鎖状RNAを作成し、直鎖状RNAの翻訳反応に正の効果を持つかどうかを検証した。PS-mRNAは、鋳型DNAおよびT7 RNAポリメラーゼを用いた試験管内転写反応に、市販のNTP-alpha-S ヌクレオチドを添加することで、立体選択的にチオエート基を導入する方法にて作成した。大腸菌無細胞翻訳系を用いてこれらPS修飾mRNAの翻訳活性を評価した結果、PS修飾は(1) オープンリーディングフレーム(ORF)に導入すると翻訳反応を阻害すること、(2) 5' 非翻訳領域 (UTR)に導入すると翻訳反応の開始反応を促進すること、が明らかになった。本知見から、直鎖状mRNAの5'UTRのみにPS修飾を導入したRNAを、2本のRNA鎖をリガーゼで連結することで作成し、その翻訳活性を未修飾のものと比較した結果、部分的PS修飾mRNAは未修飾mRNAに比較し約22倍の翻訳反応産物を与えた。本結果から、RNAの翻訳活性向上のために、位置特異的な化学修飾導入が有効な手法であることが分かった。現在、この知見を活かし、より翻訳活性の高い環状RNAの開発を行っている。加えて、環状RNAの化学的連結法による合成法を検討し、生ずる非天然連結部位を含むRNAが翻訳されうることを明らかにした。一般にリガーゼ酵素を用いて直鎖状RNAの両端を連結し環状RNAを作成する。より実用的な合成法として、末端にリン酸基とアミノ基を有するRNA断片から、P-N結合を介した化学的連結反応による環状RNAの化学合成を試みた。その結果、P-N結合を有する環状RNAにおいてもローリングサークル型翻訳反応が進行することが確認された。
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