研究課題/領域番号 |
18K14359
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
山下 ユキコ 広島国際大学, 薬学部, 助教 (50616745)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | FXR |
研究実績の概要 |
核内受容体の一種であるfarnesoid X receptor(FXR)は、生活習慣病関連治療薬の標的分子として注目されている。申請者は、既存のFXR agonistsやantagonistsの中心構造に二環性複素環が含まれるという共通点を見出し、この構造がFXR リガンドとしての薬理作用を示す上で重要なscaffoldであると考えた。本研究では特に二環性複素環骨格とヒダントイン部分をつなぐリンカー領域に着目しながら、多様なchemotypeの創造に取り組んだ。 その結果、リンカー領域にN-acylated piperidine構造の導入が有用であることを見出し、いずれもLuciferase reporter assayにおいて高いFXR antagonist活性を示すことを確認した。最も高いものではIC50値がnMをはるかに下回る(IC50<0.001nM)ほど強力な活性を示すと同時に、FXR TR-FRET binding assayにおいても良好なIC50値を示した。 さらに、CADD(Computer-Aided Drug Design)によるFXRのLBD(Ligand. Binding Domain)と合成化合物との分子ドッキングシミュレーションにより、N-acylated piperidineが有するカルボニル基がFXR-LBDのHis298と水素結合を形成していることが示唆され、この相互作用がFXR antagonist活性に関連している可能性が強いことを明らかにした。agonist/antagonistの両面からFXRを創薬ターゲットとする点に本研究の独創性があり、agonist/antagonistに共通する要となる構造的特徴を掴みつつ、薬理活性の発現に関わる重要な相互作用部位を明らかにできたことは、今後の研究展開につながる大きな躍進である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FXR antagonist活性において、リンカー領域にN-acylated piperidine構造の導入が有用であることを見出し、さらに、N-acylated piperidineが有するカルボニル基がFXR-LBDのHis298と水素結合を形成しこの相互作用がFXR antagonist活性に大きく寄与していることを明らかにした。この知見は、本研究を大きく進展させる成果であり、今後の化合物のデザインの方向性を指し示すものである同時に、本研究の目指す“FXRにおけるactivate swichの発見”に大きく貢献しうるものであると考えている。 一方、得られたFXR antagonistのin vitroでの良好な結果をふまえ、in vivoでの評価を検討中である。しかしながら、その前段階として、対象化合物の脂溶性や溶解性など、薬物動態学的な観点からの検討が必要であり、現在取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はFXR antagonistのhit化合物を基にリンカー部分に着目したが、そのほかの領域についても今後検討を進めていく予定である。特に、フェノキシベンゼン部分およびベンゾイミダゾール骨格部分の置換基の検討は重要であると考えており、FXR-LBD側の空間をどのように占有し、アミノ酸残基と相互作用させるかがリガンド活性に大きく寄与すると推測している。また、ベンゾイミダゾール骨格については、FXR agonistとしても重要なモチーフになりうるという知見を得ており、大変興味深い。今後の展開としては、ベンゾイミダゾール骨格を共通モチーフとしてFXR agonist/antagonistの両面について並行して構造活性相関を検討する予定である。 また、得られたFXR antagonistのin vitroでの良好な結果をふまえ、in vivoでの評価を検討中であるが、対象化合物の脂溶性や溶解性など、薬物動態学的な観点からの検討が必要となった。そこで、投与時の添加剤の検討を進めるとともに、強い活性を担保しつつ水溶性の改善をもたらす新しいchemotypeの選定を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
FXR antagonistのin vivo評価に際し、評価対象化合物の物性等について薬物動態学的な観点からの検討が必要となったため、動物実験への移行が準備段階となっている。よって、前年度動物実験関連費用として計上していた諸費用分を翌年度分と合わせ、実験計画を遂行していく予定である。
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