核内受容体の一種であるfarnesoid X receptor(FXR)は、生活習慣病関連治療薬の標的分子として注目されている。申請者は、既存のFXR agonistsやantagonistsの中心構造に二環性複素環が含まれるという共通点を見出し、この構造がFXRリガンドとしての重要なscaffoldであると考え、多様なchemotypeの創造に取り組んだ。 昨年度までは、主にFXR antagonistsを中心に研究を進め、IC50がnMをはるかに下回る強力な化合物を見出すとともに、活性の維持とPKプロファイルの調節に関する包括的な構造活性相関について知見を得ることに成功した。 今年度は、本課題遂行過程で見出された一連のFXR antagonistsのbuilding blockであるN置換ベンゾイミダゾールに着目し、FXR agonistsの創製に応用展開した。その結果、in vitroでの活性評価において、nMレベルのEC50を有する高活性FXR agonistを見出すことに成功した。また、CADD(Computer-Aided Drug Design)によるFXRのLBD(Ligand. Binding Domain)と今回見出された化合物との分子ドッキングシミュレーションにより、末端カルボン酸がFXR-LBDのArg331と相互作用していることが示唆された。末端カルボン酸を持たない化合物群では著しい活性低下が認められたことから、この相互作用がagonist活性の増減に寄与している可能性についても同時に明らかにした。 一連の研究によって、N置換ベンゾイミダゾールという共通した中心構造を持ちながら、agonistまたはantagonistとして相反する薬理作用を示す化合物群を見出すことに成功した。これらの知見は大変興味深く、今後の研究展開につながる大きな躍進である。
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