研究課題/領域番号 |
18K14360
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
江越 脩祐 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 基礎科学特別研究員 (60755932)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 重水素 / アルキン / ラマンイメージング |
研究実績の概要 |
近年の細胞実験では、関連する細胞を共培養して細胞の分化や増殖を評価することが重要であるとされている。特に抗がん剤などの薬材試験では、正常細胞と癌細胞を共培養した条件下で、正常細胞には影響せずに癌細胞特異的な効果を示す結果が求められつつある。現在の共培養実験では蛍光標識を用いた細胞識別法が主流であるが、この手法では細胞増殖時や単純な拡散を理由とした蛍光物質の細胞外への漏れ出しと細胞内への再取り込みが起こり、共培養した細胞の識別ができなくなり薬剤効果による各細胞の増殖の差を正確に評価するのが困難という問題がある。そこで申請者はこの問題を解決するため、本研究で共培養に使用できる複数の細胞種を区別可能なラマンイメージング技術の開発を目指した。本手法は、蛍光標識に比べはるかにコンパクトかつ基盤となる化合物にほとんど影響を与えないラマンタグを用いるため、マーカーとして使用する化合物が与える細胞間での影響に差が出にくいことも大きな利点である。 今年度は、2種類の細胞の区別が可能となる重水素化化合物を設計・合成して、合成した化合物を用いたラマンシグナル計測、化合物の安定性や細胞毒性評価などを中心に行った。その結果、特定の構造を有したアルキン化合物やいくつかの重水素化化合物で本研究的ように期待できる結果が得られた。さらに、ラマンイメージング実験では化合物に対応したラマンシグナルの細胞内分布が細胞ごとに異なることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
さまざまな重水素化化合物を設計・合成して生細胞でも安定かつラマンイメージングが可能な化合物を模索した結果、アルキン化合物の他にも重水素化によりいくつかの化合物が本研究に適用できる可能性を見出した。また、プレリミナリーな状態なため今後も検証が必要ではあるが、アルキン化合物や重水素化化合物を用いた細胞内のラマンシグナル計測において、各種化合物に対応したラマンシグナルの細胞内分布が細胞ごとに異なることが確認できた。これらの化合物をもとに各種細胞を区別可能なラマンイメージング技術の確立ができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は今年度に引き続き、さまざまなアルキン化合物や重水素化化合物の設計・合成を行い、各種細胞を区別可能なラマンイメージング技術の確立を目指す。その後、これらの知見に基づいて、複数の細胞小器官マーカーを開発して最終目的である共細胞培養系への適用を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度はさまざまな重水素化化合物の合成と細胞実験を行ったが、検討には少量で十分であり、合成際に必要な試薬や器具は購入済みのものが多かった。また、次年度には生物検定に使用する重水素化化合物の大量合成で重水素化試薬の大量購入や高価なアルキン化合物の購入、ラマン顕微鏡のメンテナンスなどに多額の費用が必要となるため。
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