研究課題/領域番号 |
18K14361
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
岩野 智 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (10734832)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生物発光 / ケミカルバイオロジー / タンパク質工学 |
研究実績の概要 |
生物発光イメージング技術開発は近年盛んであるが,大きな課題の一つは同時利用可能な生物発光システムの少なさである. 交叉反応性や波長が問題で, 並列使用可能な発光システムは2~4種類程度に限られる.生物発光を利用したイメージング技術の進展のためには,交叉反応性を持たない同時利用可能な生物発光システムを増やすことが重要である. 本課題では,独自の人工基質(ルシフェリン)ライブラリと変異酵素(ルシフェラーゼ)ライブラリの組み合わせにより,高輝度な多色生物発光レポーターシステムのバリエーションを増加させる事を目指し研究を進めている.概念実証実験として,赤青緑の独立したルシフェリンとルシフェラーゼの組み合わせによるRGB発光する完全人工生物発光システムの開発を目標としている. 平成30年度は,①独自の多色発光基質アナログ群と市販の8種類のルシフェラーゼとの掛け合わせを行い,発光活性データの取得を行った.②輝度と基質特異性に注目して良好な発光特性を示す基質アナログ・市販ルシフェラーゼの組み合わせをいくつか見出した.③そのうち,対応する基質アナログに対して,明るく特異的な変異ルシフェラーゼをランダム変異導入と発光スクリーニングにより創出し,RGB発光を示す「ほぼ」独立な人工生物発光システムの開発に至った.④開発したRGB発光を示す人工生物発光システムを利用して細胞レベルのマルチカラー発光イメージングも遂行した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,RGB発光を示す「ほぼ」独立な人工生物発光システムの開発に至った.来年度実施予定であったRGB発光システムを利用した細胞レベルのマルチカラー発光イメージングのトライアル実験も行ったところ,それぞれの基質に対応した波長の発光シグナルを取得することに成功している.人工生物発光システムのバリエーションは考えていたよりも増やすことが出来なかったが,計画通りに進展している.
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今後の研究の推進方策 |
細胞レベルの発光イメージングの結果から,発光の定量性に課題があることが明らかになった.それぞれの酵素が対応外の基質とも親和性があるため,対応する基質の発光反応を阻害していることが考えられる.平成30年度では,概念実証を急ぐあまり,in vitro実験での酵素反応の各種パラメーター(Km, Ki, Vmaxなど)の測定をないがしろにしていた. 平成31年度では,パラメーターの取得を行い数多ある基質・酵素の組み合わせの中から,最も実用的なRGB発光を示す完全に独立な人工生物発光システムの開発を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
光学フィルターの購入を考えていたが,酵素の違いにより発光波長が僅かであるが前後するため,平成30年度予算での購入は見送った.光学フィルターや光学レンズ,in vitro実験で利用するマルチチャネルピペットやピペットチップ,ウェルプレート,各種遺伝子組み換え実験に利用する酵素を購入する.
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