研究課題
アンチセンスは近年、急速に実用化が進んでいる新たなタイプの医薬であるが、その副作用の一つして腎毒性が確認されている。本研究では、アンチセンス薬が腎臓への蓄積を回避するための構造として、1)分子量の調節が可能な多量体形成アンチセンスの設計、2)脂溶性分子を接合したアンチセンスの設計を行い、実際に合成および機能評価を実施した。1)腎臓から尿排泄の経路をたどる入り口として糸球体ろ過を経るが、過去の研究から、このろ過で通過できる分量量やサイズはおおよそ見当がつけられている。したがって、先行論文を参考に、アンチセンスが3または4量体を形成する30から50 kDaの多量体を設計、合成した。実際に、ゲル電気泳動評価により、アンチセンスが多量体形成を形成可能であることを確認した。しかし、マウスに対する投与実験を行なったところ、肝心な活性が著しく低下してしまったため、設計の再検討を行った。その結果、安定性に関与する核酸修飾の多量体構造における配置が活性に大きな影響を与えることが明らかとなった。一方で、その詳細な機序を明らかにするために、多量体からアンチセンス本体をリリースするために必要と考えられる核酸分解酵素を用いた、試験管内での多量体の分解耐性試験を行ったが、活性に繋がる直接的な酵素を見いだすことはできなかった。2)脂溶性分子は、血中においてアルブンミンをはじめとする血中タンパク質と相互作用することで血中に長く留まることができる。本研究では、コレステロールや脂肪酸と言った脂溶性分子を接合したアンチセンスの設計を行い、実際に合成した。合成した脂溶性分子アンチセンス接合体をマウスに投与し、肝臓における活性および腎臓への蓄積量を評価した結果、コレステロールを接合したアンチセンスが肝臓における活性を損なうことなく、腎臓への蓄積を50分の1程度まで抑えることができることが明らかとなった。
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Nucleosides, Nucleotides & Nucleic Acids
巻: 39 ページ: 109~118
10.1080/15257770.2019.1677911