作物において開花期は、収量に直結する重要農業形質である。この重要性から、イネやシロイヌナズナなどのモデル植物を中心に、主に光条件による開花制御に関わる多くの遺伝子の同定が行われてきた。一方で土壌環境条件、特に栄養条件の違いによる開花の制御メカニズムはほとんど不明のままである。しかし農業現場では栄養欠乏で栽培した作物が早咲きを示すことが知られており、土壌の栄養条件と植物の開花期には密接な関連があることが示唆されている。 本研究では新たな開花制御因子である「栄養」に着目し、栄養による開花制御機構 (栄養開花)を明らかにすることを目的としている。 栄養開花と既知の開花関連遺伝子の関係を明らかにするため、通常、低窒素条件で開花関連遺伝子の機能欠損体を栽培し、出穂期を調査した。その結果、一部の開花関連遺伝子の機能欠損体では、低窒素条件における開花促進日数が、野生型の半分程度に抑制されていた。そのためこれらの開花関連遺伝子は、低窒素条件における開花促進に機能していると考えられた。 またGWASによって、低窒素条件における開花促進に関わる新規遺伝子の候補を同定した。候補遺伝子の機能欠損体を作成し、出穂期を調査した結果、窒素代謝に関わる遺伝子の機能欠損体は、低窒素条件下で野生型と比べてさらに10日の開花促進が観察されたことから、低窒素条件における開花促進に機能することが示唆された。
|