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2019 年度 実施状況報告書

イネの鉄過剰耐性に関わる遺伝子の機能解析と鉄過剰耐性イネの作出

研究課題

研究課題/領域番号 18K14367
研究機関秋田県立大学

研究代表者

May Sann・Aung  秋田県立大学, 生物資源科学部, 特任助教 (20799671)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード鉄過剰 / イネ
研究実績の概要

酸性土壌における天水稲作では、鉄過剰症は大きな問題である。しかしながら「イネが鉄過剰条件にどのように応答し耐性を維持するのか」に関する分子メカニズムの詳細はまだ明らかとなっていない。私は鉄過剰のマイクロアレイ結果に基づき、イネの鉄過剰耐性に関与する遺伝子の候補を見出した。また、イネの金属キレーターであるニコチアナミン合成酵素遺伝子、OsNAS3 の発現パターンをpromoter-GUS解析により調べ、鉄過剰時にOsNAS3が根、葉、茎全体に高発現していることを明らかにした(Aung et al. 2019)。ニコチアナミン、デオキシムギネ酸が鉄過剰においても同レベルに存在することを確認した。OsNAS3の機能欠損株において鉄過剰条件下で生育抑制が見られた。このことから、OsNAS3もイネの鉄過剰耐性に重要な役割を持つことを明らかにした (Aung et al. 2019)。さらに、マイクロアレイのデータに基づき、鉄過剰耐性に関わるシスエレメントの候補配列を発見した。2019年度にも、鉄過剰で発現が高く誘導され、鉄過剰耐性機構に関わると予想される遺伝子のT-DNA変異株を用いた。鉄過剰条件下で栽培し、生育検定、体内の鉄濃度測定を行い、対象の遺伝子の鉄過剰における役割を推測した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1)鉄過剰耐性のメカニズムにおけるOsNAS3の役割:鉄過剰の解毒におけるニコチアナミンの詳細な役割を、プロモーター-GUS解析、NAおよびDMAの含有量分析、OsNAS3のT-DNAノックアウト系統の表現型の解析によって明らかにした。本結果を、「Nicotianamine synthesis by OsNAS3 is important for mitigating iron excess stress in rice.」と題した論文で、Frontiers in Plant Science 10:660 in Jun, 2019 に掲載された。
2)鉄過剰に応答するシスエレメントの探索:イネにおける鉄過剰反応のメカニズムを明らかにするために、バイオインフォマティクス的手法により、候補となるシスエレメントの配列を明らかにした。これらのデータをまとめ、イネの鉄過剰反応におけるこれらの新規シス制御要素の役割についての論文を現在準備中である。
3) T-DNA挿入変異体の機能解析:鉄過剰条件下で様々な組織で高発現する機能未知の新規遺伝子について、T-DNA挿入変異株の生育が鉄過剰条件下で抑制されることを見いだした。従って新規遺伝子が鉄過剰条件下での耐性に重要な役割を果たしている可能性を示唆した。生育試験、表現型観察、金属含有量測定など、様々な生理学的解析を行った。
4) ミャンマーイネの鉄過剰耐性のスクリーニング:ミャンマーの重要なイネ15品種の耐性遺伝子型をスクリーニングし、表現型解析を行った。
5) 総説の投稿:今までの鉄過剰研究に関する自分の知見や他の研究者の最新の報告をもとに、総説を記述し、2020年3月に投稿した。

今後の研究の推進方策

計画1:イネのユビキチンリガーゼ遺伝子、HRZが鉄過剰条件下において、イネの鉄吸収を抑制し鉄過剰耐性において重要な働きを担うことを明らかにしている (Aung et al. 2018)。鉄過剰条件下での鉄ホメオスタシス機構におけるHRZのさらなる役割を明らかにする。
計画2:鉄過剰の原因となるシスエレメントの探索に向けた研究を推進する。これらの新規シス制御エレメントがイネの鉄過剰反応に果たす役割についての論文を記述し、鉄過剰耐性イネの作出に利用する。
計画3:T-DNA挿入変異体の機能解析に向けた研究を推進する。これまでに様々な生理学的解析が行われてきた。今後は、遺伝子発現と機能解析を行い、鉄過剰の役割を明らかにしていく。
計画4:ミャンマー米の研究を推進するために。鉄過剰に応答する様々な遺伝子の発現解析を行い、表現型データと組み合わせて、対照的なミャンマーの重要イネにおける耐性遺伝子型の鉄過剰応答についての論文を記述する。

次年度使用額が生じた理由

2020年1月から3月までの間に、学会に参加したりマイクロアレイ実験を筑波の農業生物資源研究所で実施する予定であったが、コロナウィルスの感染拡大に伴う出張の自粛により実施することが出来ず、それらに充てる予定の予算が大幅に余ってしまった。2020年度に、学会発表を行い、また2019年度に実施出来なかったマイクロアレイ実験等を実施する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Nicotianamine synthesis by OsNAS3 is important for mitigating iron excess stress in rice.2019

    • 著者名/発表者名
      May Sann Aung, Hiroshi Masuda, Tomoko Nozoye, Takanori Kobayashi, Jong-Seong Jeon, Gynheung An, Naoko Kishi Nishizawa.
    • 雑誌名

      Frontiers in Plant Sciences

      巻: 10 ページ: 660

    • DOI

      10.3389/fpls.2019.00660

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Enhancement of iron acquisition in rice by the mugineic acid synthase gene with ferric iron reductase and OsIRO2 confers tolerance in submerged and nonsubmerged calcareous soils.2019

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi Masuda, May Sann Aung, Takanori Kobayashi, Hamada, Takeshi, Naoko Kishi Nishizawa.
    • 雑誌名

      Frontiers in Plant Sciences

      巻: 10 ページ: 1179

    • DOI

      10.3389/fpls.2019.01179

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Iron biofortification of rice by introduction of GmFerritin, HvNAS1, OsYSL2 and mugeinic acid synthase gene (IDS3) with rice OsALS as a marker gene2019

    • 著者名/発表者名
      May Sann Aung, Hiroshi Masuda, Takanori Kobayashi, Naoko K. Nishizawa
    • 学会等名
      第65回 日本土壌肥料学会 全国大会
  • [学会発表] Nicotianamine synthase, OsNAS3, mitigates iron excess in rice2019

    • 著者名/発表者名
      May Sann Aung, Hiroshi Masuda, Takanori Kobayashi, Naoko K. Nishizawa
    • 学会等名
      17th International Symposium on Rice Functional Genomics
    • 国際学会
  • [図書] Iron Biofortification: The Gateway to Overcoming Hidden Hunger. In: Costa de Oliveira A., Pegoraro C., Ebeling Viana V. (eds) The Future of Rice Demand: Quality Beyond Productivity.2020

    • 著者名/発表者名
      May Sann Aung, Hiroshi Masuda, Takanori Kobayashi, Naoko K. Nishizawa.
    • 総ページ数
      28 pages (149-177)
    • 出版者
      Springer
    • ISBN
      978-3-030-37509-6

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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