研究課題/領域番号 |
18K14370
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
冨田 宏矢 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (00814229)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 天然物 / 生合成 / 放線菌 / Streptomyces / シトクロムP450 / ニトロ化 |
研究実績の概要 |
放線菌Streptomyces qinglanensisの持つ2つのシトクロムP450遺伝子に関し、遺伝子破壊株の作製とその代謝物プロファイルの解析を試みたが、形質転換株を得ることはできなかった。実験条件を詳細に検討したが解決には至らず、おそらくS. qinglanensisの形質転換効率や遺伝子組換え効率が悪いためと考えられる。 次に組換えタンパク質を取得し、その解析を試みた。1つは収量が非常に低かったが、このP450遺伝子は一酸化窒素合成酵素 (NOS) 遺伝子との距離が離れており、オペロンである可能性が低いと考えられたため、可溶性タンパク質として得られたもう片方のP450の研究を重点的に進めることとした。このP450組換えタンパク質を用い、各種芳香族化合物を用いたin vitro酵素反応を試みたが、ニトロ化活性の検出には至らなかった。そこで、Streptomyces atratus由来のチロシンニトロ化酵素RufOの遺伝子破壊株にプラスミドを用いてS. qinglanensis由来P450の遺伝子相補を行い、S. atratusによるrufomycin生産が回復するかを調べた結果、その生産は見られなかった。以上の結果から、S. qinglanensisのP450はニトロ化酵素の基質として知られるトリプトファンやチロシン以外を基質とする新規なニトロ化酵素であることが示唆された。 次に遺伝子破壊とは別のアプローチとして、NOS阻害剤を添加してS. qinglanensisを培養することで代謝物に変化があるか調べた。その結果、阻害剤の添加によって劇的に生産量が低下する代謝物が見出された。UVスペクトルの情報よりこの化合物はニトロ基を持つことが予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において重要な情報を得られると期待した遺伝子破壊実験が成功しなかったため、研究が難航することが懸念されたものの、NOS阻害剤を用いる発想の転換によって状況を打開する見通しが立った。研究対象としている2つのP450のうち片方は解析が進められていないが、もう片方は生合成される化合物の決定や新規ニトロ化酵素の発見が大いに期待されることから、順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度見出された化合物の精製を行い、構造解析を行う。阻害剤の添加によって合成量が低下した実験条件において、目的化合物の前駆体と思われる化合物の蓄積が見られることから、これを精製してin vitro酵素反応を行うことでニトロ化反応を詳細に検討する。もう片方のP450についての研究が芳しくないことが課題であり、遺伝子破壊や組換えタンパク質を用いた生化学的解析以外のアプローチを検討する必要がある。
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