本研究課題では、カルコゲナイド系半導体(ChSC)ナノ粒子の微生物合成法の確立を目指し、優れたChSC合成細菌であるPseudomonas stutzeri NT-Iのセレン(Se)、テルル(Te)代謝を解析することを目的としている。本年度は、NT-I株の菌体内セレン化合物の分析に取り組んだ。亜セレン酸(Se(IV))1 mM を含むTSB培地中でNT-I株を好気的に培養し、継時的に菌体を回収した。菌体を生理食塩水で2回洗浄した後、生理食塩水に再懸濁し、氷冷しながら超音波処理により菌体を破砕した。破砕液を遠心分離することにより得られた上清を高速液体クロマトグラフ-水素化物発生原子蛍光分析計(HPLC-HG-AFS)を用いて分析した。結果として、培養開始12時間後には、多数のセレン含有化合物が検出された。培養開始24時間後、60時間後の試料では、セレン含有化合物の種類は減少し、セレノメチオニン及び保持時間9分を示す未知のセレン化合物が主に検出された。これまでに細菌のセレン代謝過程で中間代謝物を検出した報告は他になく、本研究で得られた結果は細菌のChSC合成経路を明らかにする上で有用な知見であると考えられる。
|