紅色非硫黄細菌における二酸化炭素固定への関与が推定される遺伝子の、実際の二酸化炭素固定への影響を明らかにするために、アセチルCoAカルボキシラーゼ(4遺伝子)、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ(2遺伝子)、ピルビン酸カルボキシラーゼ(1遺伝子)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(1遺伝子)、イソクエン酸脱水素酵素(2遺伝子)、重炭酸イオン輸送体遺伝子(3および4遺伝子)をそれぞれ、または複数発現させたRhodobacter sphaeroides HJ株を計14株構築した。その後、これらの株をコハク酸を炭素源とした平板培地(ASY培地)で嫌気的かつ光合成的に72時間培養し(30℃、8500 lux)、得られた単一のコロニーをASY液体培地で嫌気的かつ光合成的に48時間培養した(30℃、8500 lux)。この前培養により得られた培養液を、50 mMの重炭酸ナトリウムを唯一の炭素源とした培地で、気層を水素に置換した状態で、約8500 luxの光を照射し、嫌気的かつ光合成的に培養した(30 mlバイアル瓶中に、培養液6 ml)。その結果、6株において、コントロールと比較して有意な増殖の増加が認められ、最大で約1.5倍の増加を示した。またこの時の培養液中の重炭酸イオン濃度も、コントロールと比較して有意に減少した。組換え株細胞を破砕し、粗酵素液中の各酵素活性を測定した結果、多くの株で酵素活性が認められた。以上から、アセチルCoAカルボキシラーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、イソクエン酸脱水素酵素、重炭酸イオン輸送体が宿主の二酸化炭素固定に関与し、その遺伝子を高発現させることで、二酸化炭素固定を促進できることが明らかとなった。
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