研究課題/領域番号 |
18K14376
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
本田 裕樹 奈良女子大学, 自然科学系, 助教 (90583849)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ポルフィリン / 補酵素再生 / 光触媒 / 生体触媒 |
研究実績の概要 |
常温常圧条件下で高効率な反応を触媒する酵素や微生物等の生体触媒を活用した工業プロセスの実用化は、持続可能な開発の実現という社会の要請に応える。一方、NADHやNADPH等の補酵素や電子伝達体からのエネルギー供給を必要とする酵素を用いるプロセスの実用化には、高価な補酵素や還元力をどのように反応系に供給し続けるかという課題を解決する必要がある。本研究は、微生物に対して光エネルギーを化学エネルギーへと変換する能力を付与すること、具体的には分子光触媒として機能するポルフィリン色素を微生物に生合成させ、その色素による光触媒的な補酵素再生系を構築することでこの課題の解決を目指す。2018年度は検討予定としていた「①大腸菌でのポルフィリン生合成系の強化と生合成されたポルフィリンによる光触媒的補酵素再生の実証」を行った。この項目の内容は、(1)分子光触媒として機能するポルフィリン誘導体の遺伝子工学的な改変を加えた組換え大腸菌を用いた大量生産、(2)大量に合成されたポルフィリン誘導体の精製方法の確立および種類の同定、(3)生合成されたポルフィリン誘導体による光触媒的な補酵素、あるいは酵素に電子を伝達する電子メディエーター分子の還元の検証、であった。予定通り、大腸菌に対するポルフィリン色素合成系の強化を施すことによって培養液および細胞内に著量のポルフィリン誘導体が蓄積することを見出し、さらに培養液組成や培養時間の検討により生産量の増大に成功した。またイオン交換樹脂を用いた色素の精製方法およびHPLCによる分析により、主要に蓄積する色素がZn-ウロポルフィリンIIIであることを明らかにした。さらに精製したポルフィリン色素を用いて、種々の酸化還元酵素における人工的な補酵素として利用可能な電子メディエーターであるメチルビオローゲンの光触媒的な還元が可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の予定としていた内容はおおむね達成した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、組換え大腸菌に生合成させたポルフィリン色素による電子メディエーターの光触媒的還元反応を、実際に物質生産反応を共役させることで、光エネルギー駆動型の生体触媒反応の構築を行っていく予定である。
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