研究実績の概要 |
CoQ生合成に関わる様々な新規因子の解析を行った。 これまでに、CoQ10の新規生合成因子であるCoq12がCoQ10の生合成に関わることが明らかとなっている。平成30年度は、Hisタグを付加したCoq12を大腸菌もしくは分裂酵母から精製し、生化学的な解析を行った。その結果、分裂酵母から精製したCoq12タンパク質に分裂酵母のエタノール抽出物を基質として添加した際にNAD+の還元活性が検出された。野生株と比較して、coq12破壊株より得た抽出物を基質にすると高い活性が得られた。現在、その基質の特定を試みている。 また、分裂酵母におけるCoQ10の生合成はグルコース応答により制御されていることが示唆されたため、その主要経路であるcAMP/PKA経路に着目した。3%グルコースを含むYES完全培地でcgs1, cyr1, git3, gpa2, pka1の各遺伝子単独破壊株のCoQ10量を測定したところ、cyr1, git3, gpa2, pka1の単独破壊株におけるCoQ10量は野生株の約1.5~2倍に増加し、cgs1破壊株では0.7倍に減少した。この結果は、グルコース濃度依存的にCoQ10量が変化する結果と一致する。このことから、分裂酵母においてCoQ10の生合成はPKAによって負に制御されている可能性が示唆された。また、pka1を破壊すると、グリセロール・エタノールを炭素源とする非発酵性炭素源培地において生育が向上し、野生株と比較してCoQ10量も増加した。cgs1やpka1の単独破壊株においてウエスタンブロッティングによる発現解析を行ったところ、いくつかのCoQ生合成酵素の発現が変動した。これらを学会発表で報告し、学術論文へも投稿中であり、平成31(令和元)年度の公表が決定している。 さらに、共同研究として、CoQとホスポリパーゼA1の代謝系の関連性の解析において学術論文の公表、顕微ラマン分光法を用いたCoq-GFP融合タンパク質の検出系の検討において国際学会発表を行った。
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