研究課題/領域番号 |
18K14377
|
研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
西田 郁久 島根大学, 生物資源科学部, 研究員 (20784531)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | コエンザイムQ10 / 分裂酵母 / ミトコンドリア / 生合成 / p-ヒドロキシ安息香酸 / Pka1 / 炭素源 / 阻害剤 |
研究実績の概要 |
平成30年度に引き続き、平成31年(令和元年)度もCoQ生合成に関わる様々な新規因子の解析を行った。 これまでに、CoQ10の新規生合成因子であるCoq12がCoQ10の生合成に関わることが明らかとなっている。coq12破壊株ではCoQ生合成がほとんどみられないが、大腸菌のCoQ生合成遺伝子を分裂酵母で発現させたり、様々なキノン骨格類縁体を添加することでCoQ生産性が回復することが明らかとなった。また、coq12破壊株では高濃度の硫化水素の発生や酸化ストレス感受性などの表現型がみられた。さらに、coq12破壊株でのCoQ生合成タンパク質のいくつかが発現低下することを見いだした。 低グルコース条件やcAMP-PKA経路の因子の遺伝子破壊株を用いた解析では、CoQ10の高生産に成功し、詳細な解析を行い、その成果を国際学会や学術論文で公表した。 様々な安息香酸類の添加により、CoQ10の生産性が低下することも見いだした。安息香酸によるCoQ生合成低下とp-アミノ安息香酸・p-ヒドロキシ安息香酸代謝との関連性、CoQのキノン骨格部分とイソプレノイド側鎖の前駆体を結合させるPpt1との関連性などにおいて新たな知見を得た。 顕微ラマン分光法を用いて開発したラマン散乱とミトコンドリア移行型GFP(Coq-GFP融合タンパク質)蛍光の同時検出系に関して国際学会や学術論文で公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究概要に示したとおり、CoQに関する様々な研究課題において、成果が得られた。 coq12破壊株では様々な新しい表現型を発見した。また、安息香酸類の添加でCoQの生産性が低下することを見いだし、その機構解明に迫る多くのデータを得た。低グルコース・cAMP-PKA経路とCoQ生産性において成果を纏めることができた。その他、研究成果に示したように、関連するテーマでも多くの結果が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後も、Coq12の基質の同定を中心として解析を行う予定である。coq12破壊株で蓄積される代謝物の解析、精製Coq12を用いた反応生成物の解析等を進める。また、coq12破壊株において他のCoQ生合成遺伝子破壊株にみられる表現型があるかどうかについてもデータ取得をさらに進める。安息香酸類の添加でCoQの生産性を阻害する機構について、その標的となるCoQ生合成因子の同定を行う。また、安息香酸添加に伴うCoQ生合成低下に伴う酸化ストレス等への影響も解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で日本農芸化学会2020年度大会(2020年3月、福岡市)が中止(発表は成立)になったことなどに伴い、次年度使用額が生じた。令和2年度には、試薬等の購入に充てる予定である。
|