研究課題
コエンザイムQ(CoQ)は、真核生物のミトコンドリアにおける呼吸鎖電子伝達系の必須成分としてエネルギー産生に関与する。CoQは、キノン骨格とイソプレノイド側鎖から構成され、ヒトや分裂酵母Schizosaccharomyces pombeではその側鎖長が10であるCoQ10を生合成する。S. pombeでは少なくとも11種の遺伝子がCoQの生合成に関与するが、未解明の経路が存在し、生合成の制御因子(遺伝子や化合物)もよく知られていない。そこで本研究ではそれらの解明を試みた。まず、ミトコンドリアに局在するタンパク質をコードする遺伝子(約400個)に着目し、それらの遺伝子破壊株のCoQ10量を定量した。その結果、明確にCoQ10含量が減少し、CoQ生合成に関与する報告がない遺伝子(coq12)を見いだした。Coq12はPHBやキノン骨格部分の生合成に関わる新規因子であることを明らかにした。また、S. pombeにおいてCoQのキノン骨格部分の原料となる物質を探索したところ、既知のp-ヒドロキシ安息香酸(PHB)だけではなくp-アミノ安息香酸(PABA)も用いていることが明らかとなった。さらに、CoQの生産性に関わる因子を探索したところ、PABAやPHBと類似構造を持つ安息香酸が、S. pombeのCoQ10生合成を顕著に阻害することを見いだした。安息香酸はCoQのキノン骨格前駆体に側鎖部分を結合させるPpt1の反応を阻害することが示唆された。加えて、低濃度グルコースの含有培地ではS. pombeの増殖停止が早まり、それに伴い細胞内CoQ10含量が増加することを見いだした。そこで、グルコース応答に関わる主要経路であるcAMP/PKA経路に着目したところ、この経路の活性化に関わる遺伝子の破壊株でCoQ10含量が増加し、この経路がCoQの生産性に重要な役割を担うことが明らかとなった。
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