本研究は、リーダレスバクテリオシン(LLB)を産生するバクテリオファージ(ファージ)、LLBファージを構築し、食中毒細菌の制御における新しい手法を創出することを目的としている。また、ファージの遺伝子改変のために、CRISPR-Casシステムを用いた新たな組み換えプラットフォームについても検討を行なっている。 2020年度に構築したlnqQ-T7ファージについての論文が、Microbiology Spectrumに掲載され、さらにWorld Microbe Forum 2021にてポスター発表を行った。 また、大腸菌O157-H7株を宿主とするECP52についても、LLB遺伝子やプロモーターの組み合わせが異なる5種類のLLB -ECP52を作成することに成功した。構築したLLB-ECP52は宿主の大腸菌に対しての抗菌活性の向上のみならずグラム陽性の非宿主であるバチラス属の菌に対しても抗菌活性を示した。こちらについては、2022年前半に論文を投稿する予定である。 さらに、黄色ブドウ球菌を標的としたLLBファージについては、PSARaを用いてlnqQ-PSARaの構築に既に成功していたが、溶原ファージであるという課題が残されていた。そこで、構築したCRISPR-Cas10システムを利用して、溶原化関連遺伝子4つを欠損させたlnqQ-vPSARaを作成したところ、溶原化を抑制し抗菌活性の大幅な向上が確認された。こちらについては、今後2022年度以降の新たな研究計画の中で再検討を行い、さらなる抗菌活性の向上を目指していく予定である。
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