研究課題/領域番号 |
18K14380
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
田中 瑞己 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (70803344)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 麹菌 / カーボンカタボライト抑制 / グルコキナーゼ / ヘキソキナーゼ / 脱ユビキチン化酵素 / アレスチン様タンパク質 / ユビキチン化 |
研究実績の概要 |
前年度の研究により、麹菌においてヘキソキナーゼ(HxkA)やグルコキナーゼ (GlkA)を遺伝子破壊するとカーボンカタボライト抑制が解除され、glkA破壊株ではカーボンカタボライト抑制を制御する転写因子(CreA)の量がグルコース存在下において著しく減少することが明らかとなった。このCreA量の減少がCreAの不安定化によるものかを調べるため、野生株とglkA破壊株においてグルコース添加後のCreAの安定性を比較した。その結果、glkA破壊株において野生株よりもCreAの半減期が短かったことから、GlkAがCreAの安定化に関与していることが示唆された。 また、グルコキナーゼ(glkA)の破壊によるカーボンカタボライト抑制解除の作用機序を調べるため、CCR制御に関わるアレスチン用タンパク質CreDの発現量を調べた。その結果、野生株ではグリセロールを炭素源とした場合と比較してグルコースを炭素源とした場合にはCreDの量が著しく増加するのに対し、glkA破壊株ではグルコース培地におけるCreD量の増加が見られなかった。同様の結果がCCRを制御する脱ユビキチン化酵素遺伝子(creB)の破壊株でも得られたことから、GlkAがCreBの活性制御に関与している可能性が考えられた。creBの破壊によるCCRの解除は、creDの破壊によってキャンセルされることが明らかになっている。そこで、hxkA破壊株とglkA破壊株においてcreDを破壊し、CCR解除のキャンセルが起きるかを調べた。その結果、hxkA破壊株ではcreD破壊によりCCRの解除が僅かに抑制されたが、glkA破壊株においてcreDを破壊してもCCR解除への影響は全く見られなかった。このことから、GlkAによるCCRの制御はCreBによるCCR制御とは独立していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は予想できなかったグルコースキナーゼのCCR制御におけるCreBやCreDといった他のCCR制御関連因子との関連性が明らかになりつつある。一方で、当初の計画で実施予定だったHxkAとGlkAの細胞内局在観察については、GFP融合タンパク質発現株の構築は完了したものの、蛍光顕微鏡による観察には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
1. ヘキソキナーゼとグルコキナーゼ の細胞内局在を調べるため、ヘキソキナーゼとグルコキナーゼにGFPを融合させた菌株を用いて蛍光顕微鏡観察を行う。 2. 野生株においてCreAはグルコース非存在下では核内から細胞質に排出されて分解されることが明らかになっている。glkA破壊によるグルコース存在化でのCreA不安定化がCreAの局在変化によるものかを調べるため、CreAの細胞内局在を調べるとともに、核排出シグナルに変異を導入して安定化への影響を調べる。 3. glkA破壊によるCreD量の減少が、転写レベルによるものかどうかを調べる。
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