研究課題/領域番号 |
18K14381
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研究機関 | 京都学園大学 |
研究代表者 |
井口 博之 京都学園大学, バイオ環境学部, 講師 (30712020)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 光応答 / 光受容体 / 葉面細菌 / ロドプシン / バクテリオクロロフィル / 時計遺伝子 |
研究実績の概要 |
地球上に光は普遍的に存在するが、微生物の光への応答はほとんど調べられていない。本研究では、微生物の生息環境の中でもとりわけ光を受ける環境である葉面に生息するMethylobacterium属細菌において、光応答制御および光エネルギー利用に関する分子機構を調べた。 (1)光受容体の機能解析 研究対象とするM. extorquensは、光受容体遺伝子を8個保有する。それぞれが光受容体としての機能を有することを確認するため、遺伝子の高発現により光受容体タンパクを取得し、光吸収に関する特性を調べようと進めた。また、光照射に応答する遺伝子を網羅的に明らかにし光応答制御システムの統合的理解につなげるため、マイクロアレイ解析を予定している。そのために、プローブ設計を行い、培養・RNA抽出条件を決定した。 (2)光エネルギー利用の分子機構 Methylobacteriumが保有するロドプシンの機能を調べるため、ロドプシンの高発現を試みた。大腸菌pETシステムでは正常に発現できなかったが、M. extorquensにおいてプラスミド上のmxaFプロモーターから発現させることで、正常なサイズのロドプシンを取得できた。また、バクテリオクロロフィル(Bch)の生産条件を様々な培養により調べたが、菌体からの抽出物では吸光が検出できなかった。そこで、Bchプロモーターの下流にxylEをつないだレポーターを構築した。今後、これを使って発現する培養条件を探索する。 (3)KaiCを介した制御システムの解明 M. extorquensはゲノム中に、kaiC1-kaiB2-kaiB1-kaiR1、kaiC2-kaiR2の遺伝子群を保有する。これら産物を介した制御機構を調べるため、酵母two-hybrid試験を行った。全ての組合せの試験中であるが、これまでにKaiC2とKaiR2に相互作用があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
機能解析に向かうため、光応答などに関係する様々な遺伝子の発現を行ってきた。ロドプシン遺伝子を発現でき、今後、生化学的な解析に進んでいくことができる。kai遺伝子に関しては、酵母でそれぞれ発現でき、順調にタンパク相互作用解析を進められている。想定外にバクテリオクロロフィルは生産を確認できず、別の方針に転換する。光受容体遺伝子の発現は、まだ材料の準備を終えた段階である。2018年度中にマイクロアレイ解析により、光関連遺伝子の抽出を行いたかったが、実験が遅れている。解析条件は決められたため、2019年度早期に受託解析を依頼する。
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今後の研究の推進方策 |
まず、2018年度の研究を引き続き進めて行く。具体的には①光受容体遺伝子の発現と吸光特性の解析 ②発現したロドプシンの吸光特性・エネルギー生成の解析 ③バクテリオクロロフィル遺伝子の発現条件の解析 ③Kaiタンパクに加え、関連が示唆されるLabAタンパクも含めたタンパク間相互作用の解析 である。 マイクロアレイ解析の結果を得られたら、光に応答する遺伝子を抽出し、未知のものに関してはそれぞれ遺伝子発現や遺伝子破壊により機能解析を進める。またこれまでに明らかにしてきた知見との関連も検証し、制御システムの統合的理解を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度中にマイクロアレイの受託解析を依頼する計画であったが、研究の遅れのため年度中にできなかった。2019年度早期に解析を依頼する予定であり、この解析ならびに結果に基づいて行う研究に助成金を使用していく。
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