本研究では、微生物の生息環境の中でもとりわけ光を受ける葉面に生息するMethylobacterium属細菌において、光応答制御および光エネルギー利用に関する分子機構を調べた。 (1)光受容体の機能解析:前年度の研究により本菌M. extorquensが保有する10個の推定光受容体遺伝子の発現コンストラクトを作成し、そのうち2個のタンパク質で光吸収を認めた。今年度は、残る8個について発現条件および精製条件の検討を進めた。その結果、5個の遺伝子について正常なサイズのタンパク質を得ることができたが光吸収は認められなかった。2個の遺伝子については不溶性のタンパク質しか得られなかった。1個の遺伝子は、発現菌体が黄色に着色していたことから光吸収がありそうだが、タンパク質をHisタグでは精製できなかったため、別の担体を用いての精製を進めている。 (2)バクテリオクロロフィル(Bch)の機能:昨年度に作成したレポーター系を用いてBch遺伝子の発現条件を調べた結果、明条件と炭素源をメタノールとしたときに発現量が高いことが分かった。しかしその条件で培養しても本菌ではBch生産が認められず、ゲノム情報からchlorophyllide reductase遺伝子欠損が原因と推察された。そこで本遺伝子を保有するMethylobacterium株を調べたところ、Bch生産を認めた。今後その遺伝子を破壊あるいは導入し、野生株と比較して、Bchの機能を調べていく。 (3)時計遺伝子を介した制御システム:酵母two-hybrid試験によりKaiタンパク質間の相互作用を調べる。作成したコンストラクトが正常なタンパク質を生産するか確認するため、酵母培養条件と併せて検討した結果、KaiR1以外で正常なタンパク質の生産を確認した。今後、two-hybrid試験を行うとともに、KaiR1については可溶性タグ付加を検討する。
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