研究課題/領域番号 |
18K14384
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
北西 健一 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 産学官連携研究員 (90815482)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 鉄 / センサー / 酸化還元 / 酸素 |
研究実績の概要 |
本年度は、新たに同定した微生物の酸素センシングに関わるセンサータンパク質より、ヘムエリスリンをセンサードメインとして持つヒスチジンキナーゼとフォスホジエステラーゼの2つのセンサータンパク質について研究を行った。N末端にヘムエリスリンドメインとC末端にHD-GYPドメインを持ったセンサーフォスホジエステラーゼを、Bhr-HD-GYPと命名した。このHD-GYPドメインは微生物において重要なセカンドメッセンジャーであるc-di-GMPを分解する酵素ドメインであることが知られている。精製Bhr-HD-GYPは、非ヘム鉄に特徴的な紫外可視吸収スペクトルが観測された。ICP発光分光分析より、鉄が4等量含まれていることが示された。よって、ヘムエリスリンドメインに2等量、HD-GYPドメインに2等量の鉄が含まれていると考えられる。この鉄は一方のドメインでは酸化還元のセンサーとして、もう一方のドメインでは、触媒部位として働いていることが興味深い。また、酸化還元に応答して、c-di-GMPをpGpGへと加水分解することが明らかとなった。したがって、この酵素は外界の酸化還元変化を感知してc-di-GMPの分解を制御しているセンサータンパク質であることが明らかとなった。微生物において、ヘムエリスリンドメインを持ったセンサータンパク質は、酸素を直接結合するのではなく、酸素によって引き起こされる酸化を感知するセンサー、つまりレドックス(酸化還元)センサーとして機能していることが、本研究より明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度にBhr-HD-GYPについてのキャラクタリゼーションをほぼ終了することができた。次年度中に学術論文として投稿したいと考えている。引き続き、ヘムエリスリンをセンサードメインとして持つヒスチジンキナーゼについて集中的に研究を進めていく。また、今年度得られた結果をもとに、病原菌由来の新しいセンサータンパク質を同定することに成功した。以上より、当初の予定どおり研究計画が進行しているとともに、今後の研究の種となる研究も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
ヘムエリスリンドメインを持つヒスチジンキナーゼを含む二成分情報伝達系について集中的に研究を進めていく。特に、レスポンスレギュレーターの構造と機能の相関について、研究を進める。具体的には、ヒスチジンキナーゼからレスポンスレギュレーターへのリン酸基転移反応や、リン酸化されたレスポンスレギュレーターの活性測定などの生化学的な解析を行っていく。また、このヒスチジンキナーゼについては、すでに酸化型のヘムエリスリンドメインの結晶構造を決定できている。還元型の結晶構造を決定し、酸化還元に伴う構造変化を捉えたいと考えている。さらには、全長酵素の構造決定も視野に入れて研究を進めていく。この新しい二成分情報伝達系は、外界の酸素の存在や酸化還元を感知するシグナル伝達経路であると推定され、この分子機構の詳細について検討する予定である。
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