研究課題/領域番号 |
18K14386
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
宮城 敦子 山形大学, 農学部, 准教授 (00645971)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | シュウ酸 / イネ / メタボローム解析 / CE-QQQ-MS |
研究実績の概要 |
本研究課題は稲わらの高品質化のため、稲わらの元となるイネ茎葉のシュウ酸含有量の低下を目指すとともに植物のシュウ酸蓄積機構を明らかにするものである。 昨年度までに、シュウ酸含有量の多いコシヒカリ(ジャポニカ型)、シュウ酸含有量の少ないタカナリ(インディカ型)、その両品種の正逆染色体部分置換系統を用いた解析から3つのシュウ酸蓄積候補遺伝子を見出した。そこで、本年度はこれらの遺伝子の解析に着手した。まず、eFP browser(Jain et al., 2007)を用いて候補遺伝子の発現部位を調べた。その結果、いずれの遺伝子もシュウ酸を多く蓄積する葉の基部側での発現が確認できた。また、正逆染色体部分置換系統のRNA-seqデータ(Kashima et al. 2020)を検証したところ、候補遺伝子Aがコシヒカリ背景のもので多く発現していることが認められた。他の2つの候補遺伝子では発現量において品種間差は見られなかったものの、塩基配列やアミノ酸配列の違いがシュウ酸含有量に影響を及ぼす可能性がある。一方、当初はコシヒカリとタカナリのゲノム情報が公開されていなかったため、この2つの候補遺伝子B, Cについて、コシヒカリと同様にシュウ酸を高蓄積する日本晴(ジャポニカ型)とシュウ酸含有量の少ないカサラス(インディカ型)とで塩基やアミノ酸配列の品種間比較を行った。その結果、候補遺伝子Bにおいて、カサラスのコーディング領域にアミノ酸1分子の欠失が見られた。また、候補遺伝子Cでは、カサラスにおいて転写開始点より約2 kbp上流に600塩基の欠失が、転写開始点より50 bp上流に40 bpの欠失が認められた。以上より、それぞれの候補遺伝子におけるこのような品種間差がシュウ酸蓄積の違いに影響を及ぼす可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに絞り込んだ3つの候補遺伝子がイネにおいてシュウ酸を最も蓄積する葉の基部側において発現していることが確認できた。さらに、シュウ酸含有量の異なるイネ品種間で、これらの候補遺伝子において塩基配列やアミノ酸配列、発現量において違いを見出すことができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
シュウ酸を蓄積するコシヒカリ、日本晴とシュウ酸含有量の少ないタカナリ、カサラスにおいて、候補遺伝子の配列や発現がシュウ酸蓄積量の品種間差に及ぼす影響を明らかにするため、4品種において実際に育成した植物体の葉を用いてRT-PCR法による発現解析を行い、品種間比較を行う。また、日本晴を用いてそれぞれの候補遺伝子のノックアウトまたはノックダウン植物の作出を試みる。また、昨年度までに解析が完了した世界のイネ・コアコレクション(WRC、農研機構より分譲)および日本のイネ・コアコレクション(JRC、同)の代謝物データと、公開されているゲノム情報と比較解析を進めることにより、これまでの候補遺伝子以外のシュウ酸含有量の品種間差をもたらす遺伝子(座)の特定を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
理由:コロナ渦の影響により思うように実験ができず、また、国際学会の発表参加のための海外出張等ができず、当初の予定通りの予算執行ができなかったため。加えて、研究代表者の異動に伴い、実験や予算執行が困難だったため。 使用計画:次年度、質量分析装置CE-QQQ-MS測定のための経費(試薬、抽出カラム、キャピラリ、バイアル等の購入、メンテンナンス経費など)のほか、参加可能な学会への発表参加、学術雑誌への投稿および印刷代などの経費として支出する。
|