研究課題/領域番号 |
18K14388
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山田 千早 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (30747944)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | シャペロン / フォールディング / 腸内細菌 / 結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
近年、母乳オリゴ糖分解酵素(LnbX)に対して特異的に作用するシャペロン(LnbY)が発見されたが、相同配列が他のシャペロンに限らず見つからないため機能を推測することができていない。そこで本研究課題では、LnbXの下流に存在し菌体外で働くと推測される専用シャペロンLnbYによるフォールディング作用機構を明らかにすることを目的とする。 発見した4つのLnbXホモログとそれらの専用シャペロンをシャッフルさせて全ての組み合わせにおけるフォールディング活性の有無を調べることでシャペロンの特異性を明らかにした。その特異性の情報を元に、構造解析に成功している3つのLnbXホモログの構造情報に基づき共通点を見出し、シャペロンのフォールディング機構を推察することが可能となった。予想される反応機構に基づく詳細なフォールディング活性測定に関しては繰越した次年度に行う予定である。 シャペロンの構造解析に関して、新規なシャペロンBsaYの結晶構造を分解能2Åで明らかにすることに成功した。位相はSe-SADを用いて決定した。αヘリックスからなる構造をしていることがわかった。機能を明らかにするという目的の中で大きな一歩となった。この構造情報を基盤として、詳細なフォールディングメカニズムを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホモログ全ての組み合わせにおいてシャペロンの特異性を明らかにすることができ、BsaXのシャペロンBsaYがLnbXに対して作用することがわかった。これまでLnbYの構造解析に取り組んできたが成功していなかったが、本年度になって、44%のidentitiesを有するBsaYの構造解析に成功したことは反応メカニズムを明らかにする上で大きな一歩であると考えられるため、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1)シャペロンによるフォールディング過程の解析 SAXS(X線小角散乱)を行い溶液中のシャペロンLnbYと変性させたLnbXとが結合したLnbX-Y複合体とフォールディング完了後に乖離するまでのフォールディング過程を観察する。 2)in vitro refolding 実験による作用メカニズムの解明 in vitroで変性Xとシャペロンをそれぞれ混合することで、大腸菌の異種発現で明らかにしたシャペロンの特異性をさらに確かなものとする。 2)シャペロンTnYの結晶構造解析 LnbXに対して働かないシャペロンTnYはBsaYとは異なる作用機構をしていることが考えられるため、TnYの構造解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の中、東京に緊急事態宣言が出たため2020年4月から2020年6月の間は実験をすることができなかったため、本年度の実験計画の遂行が一部遅れ、次年度使用額が生じた。また、学会や結晶構造解析を行うために、つくばへの出張を予定していたがリモート開催となり、使用する予定の出張費用が少なくなったため次年度使用額が生じた。
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