ポリマー原料としての利用が見込まれる4-vinylphenol (4VP)と4-vinylguaiacol (4VG)を生産するタケ培養細胞の作出を行った。フェニルプロパノイド化合物であるp-coumaric acidおよびferulic acidを基質とし、4VPと4VGへの変換を触媒する酵素遺伝子であるBacillus amyloliquefaciens由来のphenolic acid decarboxylase (BaPAD)を導入した組換えタケ培養細胞をパーティクルボンバードメント法により作出した。BaPAD導入株における代謝物を解析した結果、野生株にはみられない2種類の化合物が確認された。BaPAD導入株の懸濁培養細胞のメタノール抽出物より両化合物を精製し、各種分光学的手法による構造解析から、それらの化学構造を4VP primeveroside (別名 ptelatoside A)と4VG primeverosideと決定した。BaPAD導入株を細胞増殖が活発な増殖条件とリグニン生合成が誘導される木化条件でそれぞれ懸濁培養したところ、4VP primeverosideおよび4VG primeverosideの培地1 L当たりの生産量は増殖条件で高く、最大でそれぞれ48 mg/Lおよび33 mg/Lであった。タケ細胞の野生株にBaPAD反応生成物である4-VP/4-VGおよび化学合成したそれらのグルコシド体4-VP glucoside (4-VPG)/4-VG glucoside (4-VGG) を投与したところ4-VPP/4-VGPが生成し、4-VP/4-VGのヒドロキシ基にグルコース、次いでキシロースが付加し4-VPP/4-VGPが生成する配糖化経路が示唆された。
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