研究実績の概要 |
H30年度は、L-アルギニンに対して高い特異性を有するL-アルギニン酸化酵素 (AROD) の祖先型設計とその機能解析を行うことで、新規に作成した配列データベース分類法の評価を行った。まずは祖先型AROD (AncAROD) の設計に関して、以下の手順で実施した。既知のARODであるPseudomonas sp. TPU 7192由来AROD (PtAROD) の配列をBlastpで解析し、計751配列の類似配列を得た。開発した分類法を用いてPtAROD及びその類似配列を解析し、分類に重要なアミノ酸残基を4つ同定した (G15, S50, W332, T580)。これら4残基を有する配列を、Blastp解析で取得した類似配列中から選抜し、計10配列を得た。この10配列をMAFFT, MEGA, 及びFastMLを用いて解析し、3つのAncAROD配列を設計した (AncARODn0, AncARODn1 and AncARODn2)。系統解析の結果、自然界由来ARODに対してAncARODn0は進化的に最も離れており、AncARODn2は最も近いことが判明した。 次にこれら3つのAncARODを大腸菌発現系にて大量発現・精製し、酵素機能解析を実施した。結果、AncARODn0は最も耐熱性が高く、ある自然界由来ARODと比べてT1/2値が20℃以上上昇していた。その他のAncARODについても5から10℃程度、T1/2値は改善していた。また各種L-アミノ酸に対する反応性を評価したところ、AncARODn0のみL-Arg以外にもL-His, L-Phe, L-Leuなどにも反応性を有するなど、広い基質選択性を有していた。以上の結果から、ARODは基質選択性の広いL-アミノ酸酸化酵素から分子進化して、L-Argに対する高い基質特異性を獲得したと予測した。
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