ライフサイエンス研究および産業において、酵素・抗体・ホルモンなどに代表される、ある特定の機能を有する有用なタンパク質を生産し利用するために、様々なタンパク質発現系が利用されている。しかしながら、発現させたいタンパク質によっては、全く生産されない、または、生産されたとしてごく少量である「難発現」である場合があり、その普遍的な解決ルールが存在しない。 本研究では、扱いが容易な大腸菌および医薬品グレードのタンパク質生産に汎用される動物細胞発現系を用い、そのような機能性タンパク質を自由自在に大量生産するための基盤技術を構築することを目的とし研究を遂行した。具体的には、申請者がこれまでに見出した、大腸菌および酵母において難発現タンパク質の生産量を増大可能な「N末端SKIKペプチドタグ」を大腸菌分泌発現系および動物細胞発現系に適用し、その挿入位置による効果、利用可能性および限界を明らかにする。 当該年度は、N末端SKIKペプチドタグのコドンの影響を調べるために、24種類の異なるコドンパターンからなるSKIKペプチドタグ付加遺伝子を調製し、大腸菌発現系によるタンパク質生産量に与える影響を解析した。その結果、いずれのコドンパターンにおいてもタンパク質生産量の増大効果が認められた。このことから、SKIKペプチドタグによるタンパク質生産量増大は、DNAコドンの影響を受けないことが示唆された。今後、タンパク質生産量を定量化することにより、最適なコドンパターンを選定し、上記目標を遂行するためのタグとして利用していく。
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