ある特定の機能を有するタンパク質(機能性タンパク質)を、組換え発現系を用いて安価・簡単・大量に生産する技術は、ライフサイエンス研究および産業を支える柱の一つであり、その重要性はますます高まっている。これまでに、申請者は、大腸菌や酵母などで難発現なタンパク質遺伝子の開始コドン直後に、Ser-Lys-Ile-LysをコードするDNA配列(N末端SKIKペプチドタグ)を挿入することで、その発現量を増大可能であることを見出してきた。一方で、これまでに大腸菌および酵母発現系においてSKIKペプチドタグによるタンパク質発現量増大効果を明らかとしたが、その一般性や、メカニズムが不明である。そこで、本研究においては、まず、SKIKをコードする36種類のコドン変異体を作製し、そのコドンの違いが発現量に与える影響を調べた。 その結果、SKIKコードコドンDNAの挿入により、転写ではなく翻訳工程が 効率化していることを明らかとした。また、コドンの影響は認められず、SKIK以外の配列においてもタンパク質 生産向上効果が認められた。このことから、翻訳で生じる新生鎖がタンパク質自身の生産性に影響する可能性が 明らかとなった。
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