2019年度は複合体の溶液構造に焦点を当て、主としてX線小角散乱(SAXS)と放射光円二色性分散(CD)の測定を行った。前年度同様に、4種類のシグナル伝達タンパク質のSH2について、各々結合可能な3種類のリガンドペプチドとの複合体を調製した。SAXS測定については、2018年度に確立した条件を利用しクロマトグラフィー(SEC-)SAXSにより解析を進めた。先に決定した結晶構造に基づく予測散乱曲線と実験で得られたものを比較し、結晶構造と溶液構造の評価を行ったところ、概ね両者は一致することが分かった。一方、放射光CD測定については、リガンド存在下・非存在下でのCDスペクトルを取得し、二次構造含有量およびNeural Network 法に基づく残基レベルでの二次構造予測(VUV-NN法)を行った。これらについては興味深い結果が得られており、結晶構造との比較も含めて引き続き検証を進めている。なお日本学術振興会海外特別研究員としての渡航に伴い、本研究実施課題については、2019年度後期(10月)より一時中断を申請・承認されているため、2019年9月末までの実績概要である。
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